日高村産廃 管理型のみ縮小案を県が県議会文厚委に説明 事業費は70億から48億円に 自民から計画撤回求める声も
9月15日の県議会文化厚生委
日高村に建設が予定されている産業廃棄物処理施設「エコサイクルセンター」(財団法人エコサイクル高知が事業主体、事務局は県エコプロジェクト推進課)計画の大幅な見直しを迫られていた県は、9月15日に開かれた県議会文化厚生委員会で焼却炉と破砕選別施設を除外し管理型処分場だけに絞り込んだ見直し案を説明しました。この見直しは「運営赤字は認められない」と強く主張していた高知市の要望を全面的に受け入れたもので、総事業費は約70億円から48億円への減少。処分場に持ち込まれるゴミの量も半減する見通しとなっていますが、約50億円もの公金を投入する割には中途半端な計画にならざる得ないことから、委員会の審議では批判意見が続出。自民党委員からは「理事会待ちではなく議会として意思を示しイニシアティブをとるべきだ(東川正弘委員)」と凍結・撤回色が濃厚な意見が出されました。
縮小案を説明した島田京子・文化環境部長は「県としては従前の計画がベストと考えている」と前置きしながら、高知市をはじめとする財団の構成団体の意見を尊重して、焼却炉・破砕選別施設を除外した計画を10月のエコサイクル高知の理事会に出し、事前の9月議会では正式案を議会に再度説明するという意向を示しました。計画縮小により、廃棄物の受け入れ計画量は11440トン(年間)から5170トンへと半減。総事業費は70億円から48億円に減少し、県や市町村負担分も対応して減額され、20年間の運営収支は8〜9億円の黒字を見込んでいます。
縮小案の課題
@受け入れできる廃棄物の減少 焼却炉や破砕施設がないことにより前処理ができず、法的あるいは効率面で受け入れができなくなる廃棄物が生ずる。
A管理型処分場の埋め立て効率の低下 焼却できないことにより埋め立て物の減量化ができない
B医療廃棄物の扱い これまでの計画では収入源として最も大きい医療廃棄物を焼却することにしていたが、炉なくなることで焼却ができない。滅菌施設をエコサイクルセンターに設置して埋め立てる方法もあるが、焼かないとカサが張るため20年間を待たずに処分場が満杯になる可能性も。
C日高村振興策のあり方 事業費が削減される中で、振興策(約61億円)が事業費よりも高いという逆転現象が起きる。
これまで「見直しはあり得ない。焼却炉がない計画ならやらないほうがまし」と強硬にくり返してきた県が、橋本知事の判断で高知市の言い分をほぼ丸飲みする形で大幅な縮小案を提案しました。高知市にすればこれまでの言い分はほぼ通ったわけで、これ以上の「抵抗」はできないことから、課題はありながらも、エコサイクル高知の理事会はこの線でまとまっていくと思われます。
一方ここにきて反対色を強めているのが県議会の自民党と新政会。この日の委員会でも、エコサイクル高知の理事会に排出業者がほとんど参加してきていないことを指摘し、「業界に本当にやる気があるのか。産廃処理は排出者責任だ」と業界の熱意を疑問視。そもそも多額の税金を使って施設を整備する必要性が果たしてあるのかという根本を否定する意見もくり返し出されました。また日高村への61億円もの振興策についても批判が続出。「村負担分を県が肩代わりするのは県民に説明できない」などという意見が出されました。その上で自民党は議会としての意思表示を主張。凍結・撤回色の濃い決議のようなものを想定している可能性もあり、内容次第では可決もありえます。
解説 県が公的関与の管理型処分場にこだわる背景には、今の法律では質の悪い民間産廃業者を排除できないというジレンマを抱えている中で、香川県の豊島のような事例をくり返してはいけないという切実な思いがあることは確かです。そして議会の反対色の強まりの背景には県東部で産廃開発を強引に進めようとしている業者などへの配慮という「負の側面」があることも否定できません。
しかし、莫大な公金を投入して施設を建設したとしても、質の悪い業者を排除することは実際にはできないのが現実です。廃棄物は処理単価の安い施設に流れるのは自明の利で、公的関与の施設を作ったとしても、現行法で営業を許可せざる得ない後発業者が、より安い価格設定をすれば(競争では公的関与施設は絶対にかなわない)、廃棄物は現実にはそちらに流れていきます。
真の問題解決のためには、産廃業者の許認可や、県の指導監督権限を強化する上乗せ条例の設置や補助制度の創設でまともな産廃業者を育成するなどの入り口の方策が本筋。施設ありきでなく、今何が本当に必要なのかを、じっくり考える時です。