2005年9月18日


住民不在 高知市・春野町合併法定協設置なぜ急ぐ 違法墓地など課題先送り



   違法町営墓地をめぐり春野町議会が特別委設置。合併にむけた重大問題に


岡崎誠也・高知市長は、9月21日から始まる9月定例市議会に、春野町との合併を前提として協議をすすめる合併法定協議会の設置議案を提案することになりました。議案の成否は市議会の判断に任されますが、合併後のゴミ処理費用の二重負担、同和団体との覚え書き、違法墓地、公民館の運営費の格差などなど、次から次へと出てくる重大問題を棚上げにしたまま闇雲に法定協設置を急ぐ執行部の姿勢に、市議会内からの強い反発が予想されることから、審議の行方が注目されます。

合併までに解決しなければならない主な課題は以下のようなもの。

@現在春野町が加入しているゴミ・し尿処理の一部事務組合(土佐市、いの町、日高村)の脱退問題 当初、高知市は、合併後は一部事務組合から脱退することを求めていたが、県市町村合併支援室の仲介を受け、平成24(ゴミ)、26年(し尿)まで継続加入することで妥協する構え。すぐ近くに宇賀清掃工場があり、自前で処理できるにもかかわらず、一部事務組合への負担を続けることにより市民負担が増加する可能性。

Aゴミ収集業務を同和団体に独占委託する覚え書き 春野側は「合併までには破棄する」としているが、同和団体との話はまだ決着していない。「雇用のこともあるのでなかなか難しい」という声も。町側が一方的に破棄通告できない体質を露呈。

B地区公民館の運営費用 春野町には集落ごとに15の地区公民館があり運営費として1200万円(16年度)を町が支出。現状の高知市(鏡・土佐山分含む)の地区公民館への負担は合計1700万円程度であり、著しくバランスを欠く。高知市の場合、地区ごとにある「公民館」は「公民館類似施設」と呼ばれ、基本的に地元住民負担で運営。春野側は「合併までに廃止で概ね賛成した」とされているが、「15地区公民館を新市が引き取ることを前提にしている」との指摘あり。高知市執行部は「公民館の位置づけについて相談はしていない。法定協の中でよりよい方向を」と先送り。高知市並の地元負担が具体化されれば異論噴出の可能性あり。

C同和住宅の入居条件と家賃 春野町の町営住宅は全部で137戸だが、入居条件はすべて「同和地区に1年以上居住している者」とされており、家賃は固定(17年度は月額11000円〜16000円程度)。高知市営住宅の入居条件は「高知市に居住または通勤」で、家賃は所得と地価や床面積による応能応益負担となっている。春野側は「高知市に合わせる」としている。家賃が大幅引き上げになる世帯も多くあると思われるが、入居者との話はこれから。

D最終処分場 春野町秋山地区にある春野町一般廃棄物最終処分場から、遮水シートが破れ、汚水が地下水に浸出している可能性が指摘されている。また産廃の不適正処理の指摘もある。

E違法墓地 町議会の議決をしただけで、経営許可・墓地条例もないままの違法な「町営墓地」(雨森広志・元自民党県議らが深く関わる)など、ずさんな違法墓地が春野町に多く存在していることから、合併までに解決しておくことが当然の前提になっている。雨森・元県議がかかわった墓地で住民から集められた永代供養料の使途に不透明さがあることが指摘されていることから、春野町議会に調査特別委員会が設置(来年3月までに報告を出す)。高知市執行部は「8月末には一定のめどがついた」とくり返すが、委員からは「何のメドがついたというのか」「特別委の調査次第では合併どころではなくなる。調査の結果を待つべきだ」というきびしい批判意見。


解説 岡崎誠也・高知市長は市議会の反発を承知の上で、9月議会への法定協設置議案提出にこだわったのは、高知市との合併推進が唯一ともいえる政治的立場の氏原嗣志・春野町長の「せめて法定協までは」という強い意向を聞き入れた側面が濃厚です。そもそも9月議会への提案というスケジュールは氏原町長の選挙の任期との関係が発端でした。市議会特別委の審議の中でも「合併を公約にした春野町長の政治的理由に合わせた提案。高知市民のことを考えているとは思えない」、「こんなことで本当にいいのか。メドが立ったとは思えない。ただの先送りだ。何も解決しておらず市民に説明できない」などというきびしい意見が市長与党の自民党から出されました。

岡崎市長も本音では、合併を急いでも特段のメリットがない中で、あえて課題山積の春野町との合併をすすめ「火中の栗」を拾うことには乗り気でないと思われます。氏原町長の「顔を立てる」ため、法定協設置議案までは提案するが、あとは議会が決めることであり、議会がつぶせばそれもよし、法定協が設置されて議論の中で破談してもやむなしと考えている気配が見え隠れします。

これまでに明らかになっている課題は、どれも簡単に解決がつくような問題ではなく、仮に法定協が設置されても先行きは、厳しいものがあります。自治体合併という「百年の大計」が、政治的メンツで軽々しく扱われることが果たして許されるのでしょうか。


違法墓地 墓地造成・経営には「墓地、埋葬法に関する法律」に定められている保健福祉所長の許可が必要。無許可の違法墓地には「6箇月以下の懲役又は5千円以下の罰金」という罰則が科せられます。無許可「墓地」への埋葬は厳密に言えば「死体遺棄」に該当する重大問題です。

このような事態を町役場が関わって引き起こした背景には、地域ボスいいなりの役場の体質がありました。住民からは「町営墓地と言われて買った。今更違法と言われても納得がいかない」、「集めた金はどう使われたのか」という声が噴出。契約内容は売買か貸借か、金を集めた主体はどこか、金の使途の明細など大切なことがはっきりしないひどい状態です。

県食品衛生課は「違法墓地は許されず法に沿い解決するのは当然」としたうえで、「許可以前の話として経営主体を町営か地縁団体かを決め、町営なら地権者に個人がいてはならない(実際にはいる)し、地縁団体の場合も利用者全員が土地を買ったのでないという認識に揃えてもらう必要がある」。実際には30年も前の話であり、関わった当事者が死去していたり、代金支払いへの認識もまちまち。金銭使途の明確化とともに、解決にはかなりの時間がかかることが予想されます。