2005年8月29日             


マニフェストちゃんと読んでますか 民主党候補の訴え支離滅裂 二枚舌はどっち?


9月11日に投票される衆議院選挙にむけて県内各党の激しい舌戦が始まっていますが、県内の民主党から立候補する候補者の訴えと、民主党が政党として有権者に公約している「マニフェスト」とかけ離れていることに「有権者をだますのか」という批判が起こっています。批判を受けて「私は私」と開き直っている候補もいるようですが、岡田克也民主党代表は公認候補全員が選挙戦にあたってマニフェストを尊重して民主党が政権をとった時には実行するとの誓約書に署名していると発表しています。有権者を欺く、民主党候補の主張と、マニフェストとのダブルスタンダード(二重基準)、乖離ぶりを検証します。


増税問題 高知1区の五島正規氏(比例重複)や2区の田村久美子氏の政策を訴えるビラ「プレス民主号外」は、「サラリーマン増税にストップ」と大書きし、政府税調の示した所得控除や配偶者控除の廃止を厳しく批判。8月26日にかるぽーとで開かれた五島陣営の決起集会でも、横路孝弘・同党前衆議院議員が「郵政に気を取られているうちに各種控除を廃止する大増税が出てくるのに小泉首相はこのことを話していない」。五島氏自身も繰り返し、「サラリーマン増税」を厳しく批判しました。

ところが、民主党のマニフェストは「配偶者控除、配偶者特別控除、扶養控除を廃止」を明記しています。控除廃止による増税分を児童手当の拡充に流用するのは民主党の政策の「目玉」のひとつのはず。マニフェストで掲げる増税方針を有権者に説明しないのは有権者を欺くものです。

児童手当を拡充するので「差し引きで増税ではない」という言い訳が聞こえてきそうですが、少なくとも義務教育までの児童のいない勤労者世帯は、丸ごと大増税になることははっきりしており、これを「サラリーマン増税」とわずしてなんといえばいいのでしょうか。与党の控除廃止はけしからんが、民主党の控除廃止はOKでは筋が通りません。

民主党の増税方針でさらにひどいのは年金目的消費税。前出の「プレス民主号外」や決起集会では、「郵政より年金改革」というスローガンが強調され、「サラリーマン増税阻止」とともに五島氏、田村氏の訴えの柱になっています。

マニフェストには「年金目的消費税などを財源に老後の最低限の年金を保障します」と明記。「年金目的消費税」とは現行の消費税に3%上乗せをする消費税税率アップによる大増税計画。「サラリーマン増税ストップ」を叫ぶ前に、自ら実行を誓約署名したマニフェストの内容をきちんと読んでいただきたいものです。


郵政民営化 田村氏のビラには「郵政民営化絶対反対」と大書き。続いて「郵貯・簡保は徹底縮小していきながら、郵便や年金受け取りなどの窓口サービスは、国の責任で全国的サービスを維持します」。五島氏の集会でも郵政民営化反対の気勢をあげました。

田村氏の「民営化絶対阻止」と矛盾する、公社の存続を危うくさせる「郵貯・簡保の徹底縮小」という主張は首を傾げざるを得ません。公社のままであれば税の投入なしに維持できている全国窓口サービスを、わざわざ郵貯・簡保を縮小して公社の体力を落としおいて、わざわざ税金を入れて窓口サービス維持を求めるとは見識が疑われます。

マニフェストには「郵便貯金・簡易保険を適正規模に縮小した後は、政府系金融機関との統合も含め、あらゆる選択肢を検討します」と書かれています。

田村氏の言う、郵貯縮小案は確かに民主党の主張そのものですが、ビラに大書きされた「郵政民営化絶対阻止」との整合性はまったくありません。また郵貯縮小後には民営化も排除しない「あらゆる選択肢を検討する」というマニフェストはどう説明するつもりでしょうか。(8月29日の日本記者クラブの党首討論で岡田代表が郵貯・簡保は民営化もしくは廃止すると発言)


憲法問題 田村氏はビラに「憲法9条は変える必要なし」と明記。五島氏は憲法問題に触れず、論議を意図的に避けています。

マニフェストは、@自らの「憲法提言」を国民に示し国民との対話を精力的に推し進める、A衆参各院において国会議員の3 分の2以上の合意をめざしコンセンサスづくりに努力。

民主党が国民に示している提言の内容は「国連の集団安全保障活動に積極的に参加」と9条を変え、「国連軍」に参加して武力行使可能にするというものです(民主党憲法提言中間報告より)。

憲法9条を守るというのが本気ならば、民主党のマニフェストは到底認められるものではありません。もっともこれは民主党候補を推薦している、護憲が旗印のはずの社民党・新社会党や自治労などにもあてはまります。


人権侵害救済法  民主党各候補は触れようとしていませんが、部落解放同盟が生き残りをかけて猛烈に成立を目指している同法(政府案よりさらに問題が多い)成立が民主党のマニフェストには明記されています。

8月26日の五島氏の決起集会では、マイクを握った森田益子・元解同県連委員長が、「福井照は二枚舌だ」と約15分間にわたり猛烈に会場をアジテーション。さらに松岡徹・部落解放同盟中央本部書記長(参議院議員)までが駆けつけて、「今日は参議院議員ではなく部落解放同盟中央本部書記長としてきた」「全国の解放同盟の仲間が五島先生を応援している」と檄。会場は大きな声援と割れるような拍手に包まれました。「解同」がかつてなく選挙の前面に登場して、組織をあげて人権侵害救済法成立のために民主党を支援しているのが実態です。


政治姿勢 五島氏の決起集会で応援演説をした森田益子氏は、自民党の福井照氏が公認ほしさに郵政民営化を認めた変節を「二枚舌」、「政治家は信念が命」と激しく批判しました。森田氏の批判は的を得たものですが、五島陣営にとって天に唾するものです。

五島氏は96年の総選挙で高知1区から、自民・社民・さきがけ政権の代表として自民党に推されて出馬(選挙直前に先代民主党に乗り換えるが自民推薦は変わらず。落選して比例復活)しました。93年の総選挙で五島氏は社会党から「反自民」を叫けび当選し、細川連立政権に参加。ところが、翌年一転して自社さ政権に寝返り、その後の民主党への鞍替えなど政治信念がめまぐるしく変遷し続けたのが五島氏でした。福井氏の「二枚舌」批判の前に、有権者に説明しなければならないことがあるのではないでしょうか。