2005年6月13日


高知県国民保護協議会を開催 動き出した国民保護法 戦時体制に向け思想動員 民放4社は欠席


有事法制の中で住民や市町村と密接な関わりを持ち、国家総動員体制の第一歩になる県国民保護計画を作成するための第1回県国民保護協議会が5月30日、高知市の三翠園ホテルで開催されました。協議会には国、県、市町村、自衛隊、運輸や通信・日赤・NHKなど「指定公共機関」の代表が参加。同法の取り組みが先行している前鳥取県防災監の岩下文広氏が講演しました。この日の委員会には指定地方公共機関に組み込まれている県下の民放4社(高知放送、テレビ高知、高知さんさんテレビ、FM高知)は名簿を提出せず出席しませんでした。

協議会の冒頭、あいさつに立った橋本知事は「国民保護法が施行され、国県市町村が、連携して武力攻撃の際の国民保護に取り組むことになった。いろんな意見があることは承知しているが、県民の生命財産を保障することは県の務め。これは武力攻撃でも同じ。自然災害に対しては県民の防災意識は育っているが、ミサイル攻撃や大規模テロなどは経験もなく想定した取り組みと言われても、現実のものとしてとらえにくい。隣国からミサイルが発射される事態になった時に、高知県を目標にするということはほとんどの県民が考えないだろう。いざという時に県民にどう知らせていくか、どういう道路を使って避難するか、救援物資を誰がどのように運ぶのかを県民に示す必要がある」と述べました。

委員の人選で目立ったのは香我美町に駐屯する陸上自衛隊第2混成団施設隊に加えて、航空自衛隊西部方面隊(中国・四国・九州をカバー)のトップである司令官、海上自衛隊呉地方隊(瀬戸内海と土佐湾を重装備の護衛艦や掃海艇で警備)のトップの総監自らが出席するなど、「制服組」の並々ならぬ「意気込み」。協議会の委員は(別表参照)、この時点では47人ですが、県危機管理課は、民放4社など現在未定の委員を今後も増やしていくとしています。

今後は10月に予定されている第2回協議会で「県国民保護計画」原案を審議し、来年1月の3回協議会で計画を確定するスケジュール(事務レベルの幹事会も3回開催)。

■岩下氏の講演内容

岩下氏の講演の演題は「鳥取県における国民保護の取り組みについて」というものでしたが、45分間の講演のうち40分程度が鳥取県西部地震への対応についての話で、武力攻撃対応については、ほとんど言及しませんでした。わずかに触れた中で強調していたのが、市町村職員の「意識改革」。「問題は市町村を変え、住民をどうするか。県と市町村は平等ではなく、県が主導権を持って指導しなければ話にならない。県は市町村職員の指導を徹底してやる。県民啓発が大事。自治体が避難勧告をして、住民が嘘だろう、まだ大丈夫だろうでは避難はできない。逃げろと言ったらすぐ逃げるように意識の乖離がない状況にしてほしい。町長や知事の言うことを聞いていれば間違いないと住民が理解しなければならない。住民の意識改革をしていくには、市町村職員の意識を変えなければならない。首長の意識も変えなければならない。首長と住民の意識は近い。こういったところに攻めていかないと、いきなり県がやろうとしても無理。一番先端である市町村の職員が、意識を変えて自らがやっていくことにならないと定着しない」。

言葉の端々に国家総動員体制を構築していくための思想動員を自治体職員に担わす狙いが示されました。岩下氏が言う「意識改革」とは、結局のところ、「北朝鮮がミサイルを撃ってくる」、「中国が攻めてくる」という類の「仮想敵国」に備えるということに行き着き、憲法の平和主義とアジアで日本が隣国と共存していく方向性を踏みにじるものです。

■民放4社の対応

民放4社は、この日の協議会に先立ち、有事であっても報道の自主性が確保されるよう見解を発表。第1回協議会には委員を出さず欠席しました。マスコミで委員として出席したのはNHKだけでした。今後の国民保護協議会への対応について高知放送の高木寿隆・報道センター長は「次回から出席せざる得ないとは思っているが、マスコミを利用した情報操作の危険もあり、キー局とローカル局の関係もよく分からない。今までの災害時と同様、住民への情報提供は当然やっていくが、自主的にやるのと法で縛られるのとは全然違う。協議会に参加した後に我々の主張が受け入れられない時の対応など、4局で歩調を合わせて検討している」と次回からは出席する意向を示しながらも、戦争時に国の「広報」の下請をさせられ、自由な報道ができなくなる可能性に危機感をにじませました。