2005年6月13日


アラを探せ! 県魚さい加工公社 処理量減少で苦戦 急がれる支援策


      高知市治国谷の魚さい加工工場


2005年4月にオープンした県魚さい加工公社魚腸骨資源化施設(高知市神田治国谷)が、原料となる魚アラ(おろし身を取り除いた後の頭、エラ、骨など)の減少により売り上げが伸びず苦戦しています。同公社が製品化して販売している魚粉や魚油の売れ行きは好調なだけに、なんとしてもアラを確保したところですが、長期的な魚消費の減少傾向に加え、鮮魚業界の構造変化もあり、なかなか思うに任せない状況。捨てればただの生ゴミになるアラを資源として活かせるせっかくの施設。安定的に運営できるための方策が急がれています。

この施設を運営しているのは財団法人・県魚さい加工公社(県、高知市など18市町村、漁協や中央市場鮮魚組合などが出えんして1997年に設立)。日高村で民間業者が運営していた老朽化した施設を買い取り設備を更新して操業をはじめましたが、日高村では住民から悪臭への苦情が非常に強く、移転は長年の懸案事項であったため、高知市のイニシアティブによる将来の移転が前提とされていたことから、紆余曲折を経て2005年年4月から高知市神田治国谷(南嶺の稜線)の新工場での操業にこぎ着けました。

新工場の整備費用は約12億円(県と市町村が分担して負担)。悪臭や汚水を外部に流さないよう配慮した最新鋭の施設で、処理能力は日量30トン。スーパーや鮮魚店からアラを回収する収集運搬業者を経由して工場に運び込まれたアラは、破砕・煮沸・圧搾の行程を通過し、魚油と魚粉に分けられ製品化されます。魚粉は家畜やペットのエサに、魚油は石けんや化粧品の材料や燃料に使われています。

■アラがない

同工場の2005年4月の処理量は493トンにとどまり(前年同月551トンの89%)ました。「ソウダガツオの水あげが少かったのが効いている。1カ月ではなんとも言えないが、苦しいことには違いない。今はBSEの影響もあり魚粉の単価もよく、アラさえ入ってくれば売り上げを伸ばせるのですが」(同公社の宮地克己専務理事)ともどかしさを隠せません。

                       同工場の内部

公社の立ち上げに関わった渡辺賢介・県エコプロジェクト推進課長は「5年ほど前まで年間8000トン近くの処理量があったが、今は6000トン程度(2004年度実績は6495トン)。魚の消費量が減り、弘化台に入る魚自体が減っていることに加え、県内でさばく魚が減っている。県内の量販店には焼津など水揚げされた港の近くでさばかれた切り身の状態で入ってくる」と最近の情勢を説明します。

同公社は立ち上げ以来、運営赤字は計上していませんが、今年度は処理量の減少に加え、重油の高騰、新工場の環境対策により電力料が増えているなどの要因もあり、設立以来初の赤字経常の危険があります。

魚アラは排出業者に処理責任がある産業廃棄物とは異なり、市町村に処理責任がある一般廃棄物であることから、赤字が出たとしても直ちにそれが問題ということにはなりませんが、新工場に移転していきなり赤字というのは絶対避けたいところ。また赤字が累積していけば施設の存在そのものが危ぶまれることにもなります。仮に同工場が廃止された場合には、現在再生処理している年間6000トン余のアラを焼却炉で燃やして処理することになりますが、現存しているリサイクルシステムを壊して焼却へ後戻りさせることは時代の流れに逆行し、焼却コストの増加分も考えれば、非常に取りにくい選択肢です。工場の現場では赤字にならないように、こまめに照明を消したり、機械の稼働日を集約してコストダウンをはかるなど、懸命の努力をしていますが、アラの搬入量が増えなければ根本的な解決は難しいものがあります。

■アラを増やせ

現在分別できていないアラは残飯として焼却されているものがあることから、業者が分別のメリットを感じることができる仕組みをつくれば、量が伸びる余地はまだあります。「養殖の死魚を引き取るシステムができないかと検討中。また市民に魚をたくさん食べてもらえるようにしなければ」(高知市環境政策課)という努力も始まっています。

さらに追い風としては、食品リサイクル法の規定により、食品排出業者に廃棄物の排出量を20%削減する数値目標を2006年度中に決定することが義務づけらたことがあげられます(年間100トンを超える業者には違反すると罰則)。アラを再生利用に出せば「削減」にカウントされることから、これを機に、行政による指導や誘導策をてこ入れしてアラを確保する取り組みが急がれています。

一方で、ただ量を増やせばいいというものではないというジレンマもあります。運び込まれるのは魚アラ100%でなければならず、哺乳動物や鳥類の骨などが混じることは厳禁。「魚以外の骨などが混じると品質が落ち飼料として販売できなくなり、価格の安い肥料としてしか売れない。アラがほしいのはやまやまですが、なんでもよいというわけではなく、きちんとした分別をお願いしたい」と宮地専務理事はアラの質にも神経をとがらせます。魚粉や魚油の売上単価や重油コストの相場は頻繁に上下することから、公社単独での企業努力には限界があり、県や市町村、業界団体が公社をささえていくシステム作りも大切になってきています。