2005年5月26日


ダブルチェックどころかノーチェック 課長・補佐「通帳一度も見たことない」 岡崎市長と食い違い 次回特別委で市長から事情聴取 高知市観光課横領事件


     観光課内に置かれた市観光協会のスペース 観光課員11人は観光協会の職員でもある 
           

高知市観光課の松本勝彦・課長補佐(平成17年4月に懲戒免職、5月逮捕)が同課が管理している外郭団体の事業費を横領着服した問題を調査している「同市議会補助金等交付金事務調査特別委(浜辺影一委員長)」の5月26日の委員会で、平成13年〜16年度にかけて課長・同補佐を務めた3人の幹部職員から事情を聴取しました。この中で頻繁に着服が行われていた時期(15年、16年度)の課長・課長補佐は共に課内に置かれていた外郭団体の通帳や印鑑を「一度も見たことがない。松本が管理していたはず」と述べ、まったくノーチェックの状態が長期に続いていたことが判明。着服事件の背景にある組織的問題点が浮き彫りになりました。

高知市役所は14年6月に同市農林水産課で起きた横領事件を受けて9月に「取り扱い指針」(ダブルチェック体制や預金通帳残高の確認など)を出しましたが、観光課(当時の課長は岡崎誠也氏)では「うちの課は大丈夫だろう」とまったく対応しなかったのが実態でした。着服された口座の通帳は、松本被告が1人で「管理」していたため誰からもチェックが入らず、合計約768万円もの大量着服が長期にわたって(15年3月〜16年12月まで15回の引き出し)繰り返されていたにもかかわらず、17年4月まで発見が遅れました。

5月10日の「高知新聞」で岡崎誠也市長は(13年度、14年度観光課長)、「14年夏から課内でダブルチェックを厳しくやった。主には課長補佐のところでやったはずだ。外部団体のお金を扱っていたので、よりチェックを厳しくした」と発言しています。しかし、この日の委員会では、岡崎課長の下で働いた補佐が「龍馬の生まれたまち記念館の立ち上げだけをやってくれと(岡崎課長に)命じられていた。公金のチェックの仕事はしていない。通帳は一度も見たことがない。キャッシュカードがあることもまったく知らなかった」と述べ、岡崎市長の言い分とは大きく食い違っていることから、次回委員会(6月2日)での岡崎市長の発言が注目されます。

松尾前市長のイベントでの扮装好は有名でしたが、この日の聴取では「観光行政」、とりわけ即効性のあるイベントを前市長が重視して「毎月1回はイベントをやるように」と何度も観光課に要請していたことが明らかになりました。同課職員は次から次へとイベントをこなすことに追われ、異常な長時間労働(多いときには月200時間)をしなければならないような実態があることから、職員には「観光課だけには配属されたくない」という評判がたっていたといいます。一方で同課の予算は他セクションとは対照的に極めて潤沢で、観光イベント関連事業であれば予算の枠を気にせずに「青天井」の増額ができました。

今回の着服事件の背景には、このような問題とともに、イベントや事業終了後も決算を行わず不明瞭な残金を出すことの常態化、外部事業の通帳を課長・補佐が認識しておらず残高確認などのチェックをしていない、観光協会や外郭団体をダミーに金をプールして使う、観光協会と観光課との組織的な混同、事後決裁による物品購入の常態化など野放図な会計処理の実態がありました。そして何より、管理職の多くが「イエスマン」化して本来やるべき管理職の仕事をしていなかった松尾前市政の「負の遺産」が大きな問題です。

この日の委員会では、市長与党の「市民クラブ」(旧社会党系)のトーンダウンが目立ちました。前回まで追及の先頭に立っていた浜田拓委員は今回はほとんど沈黙。武内則男委員に至っては「民主党の用事」で委員会を欠席しました。