「部落」の実態調査を要求 「解同」県連が県人権課と交渉
今後、「隣保館」の指定管理者移行が問題になってくる
部落解放同盟県連合会(野島達雄委員長)は2月24日、高知市内で「『三位一体改革』下での人権・同和行政の推進及び指定管理者制度導入に関する要請」を県人権課に申し入れ、旧「同和地区」内外で線引きをした実態調査の実施、「差別事件」があった場合の県対応方針の変更を強く要求しました。「解同」からは山戸庄治書記長など、県側は十河清・企画振興部長、黒田孝道・人権課長らが出席しました。
「解同」側の要求のポイントは@「三位一体の改革」下でも「差別撤廃・人権確立施策を成果を損なうことのないように推進すること」(「部落」住民の雇用創出自立就労支援など)、A「連続差別落書事件」への対応強化、B「部落」内の公共施設の指定管理者移行に際して「同和問題の解決」の視点を盛り込むこと。
実際のやりとりで時間が割かれたのは、県による「部落」の実態調査の実施要求、「差別事件」対応時に「運動団体と同席しない」という県方針の変更、県が発行した南海大震災誌復刻本に不適切な表現があり回収した問題についてでした。
■県「線引き調査」否定
「解同」側が毎回の交渉で重視する「部落」の実態調査について、十河部長は「法が切れ一般対策になったということは同和地区だとか地区出身者だとかいうことで特別な扱いをしないということ。同和地区の就労実態の調査や特別な対策は国の方針としても県の方針としてもしないのが基本的な姿勢」。
「解同」側は「この問題はずっと求めていく。福岡市では調査をやり、福岡県、三重県、和歌山県で予定されている」と迫り、十河部長は「いろんな自治体で地対財特法後、一般対策に移ってどう変わったのかということが検証されれば参考にして対応を考えたい」とややあいまいな回答をしました。
「差別事件」が発生した時に「確認学習会」に出席せず「運動団体」と同席しないという県の方針を「解同」側は強く批判しました。黒田課長は「双方の人権に配慮した少人数の話合いなら否定しない。その中で双方をケアしていくスタンス」と述べ、確認学習会への参加を改めて否定しました。「解同」側は「県は我々をオミット(無視)して独善的な対応をしている。被差別当事者が入った話し合いに応じないことに不信感を持つ」「被害者の組織である我々と初動の段階から協議すべきだ」と強調しました。
県危機管理課が防災意識を向上させるため配布した南海大震災誌復刻版に同和問題での不適切な記述があり回収した問題では、県が主体的な対応をとり該当内容を公表していないことに「解同」側が「どんな内容か」とクレームをつけ「当事者団体である我々としっかりした話し合いを早く設定すること」を要求。十河部長は「調査中」と述べるにとどまりました。 「部落内」公共施設の指定管理者移行については、「解同」側は「同和問題の解決に資する」と設置条例に書くことや委託を受ける団体の選考は「部落出身者の雇用状況」を基準にすることなどを求めましたが、県は具体的な回答はしませんでした。
解説 県が「闇融資事件」と特措法期限切れを契機に、同和行政を廃止してから3年。県行政にも新しい路線が定着し、この日の交渉も県の回答にややあいまいな点もありながらも実質的には「解同」にとって「ゼロ回答」に近いものでした。
「解同」が毎回の交渉で決まって強調するのは「部落の実態把握」。「解放新聞」1月24日に中央本部主張として「行政闘争を強化し部落の実態把握にもとづく政策提案をおこなう運動が構築できれば『三位一体改革』という危機をチャンスにすることができる」とあるように「実態把握」は「解同」の行政闘争の基本ですが、県は度重なる「解同」の要求に対し一貫して「線引きした調査はしない」という立場を堅持しています。
「確認学習会」への不参加や「運動団体と同席せず」という県方針を批判する「解同」の意識は、「解同」=被差別当事者なのだから、「事件」があれば「解同」の介入は当然という独善的な「特権意識」に未だに貫かれています。旧同和地区住民=部落解放同盟ではなく、特措法の期限切れ後も旧態依然とした「解同」流のやり方を続けることに批判的な住民も多くいます。問題はあくまでも主体的に解決されなければならず自称「被差別当事者」の一運動団体にいちいち県が報告し介入させる必要はありません。
南海大震災誌復刻版の回収について県は「解同」にも具体的な内容を報告していませんでした。以前なら「いの一番」に「解同」に報告し、大挙して確認・糾弾という流れになるパターンですが、今回の県の主体性を持った取り組みは今のところ評価できるものです。不適切な表現があるなら回収して広がらないようにすればよいわけで、回収した本を再び団体に配って問題を拡散するようなことはすべきではありません。(中田宏)