これでいいのか市町村合併論議 事実でない情報に住民翻弄
住民投票最終盤に大正町でまかれた推進派のビラ まったく事実を偽る内容
自治体の将来を決める市町村合併が3月末に大詰めを迎えることから、県下各地で住民の議論が行われていますが、住民の判断の前提となる情報が、非常にあやふやなものにもかかわらず、あたかも確定したかのように伝えられたり、事実を偽るなど、地域の将来に禍根を残しかねないケースが多く見られます。
1月30日に窪川町・大正町・十和村との合併の是非を問う住民投票が行われわずか30票差で合併賛成の選択をした大正町では、投票日の直前に「町長自立をあきらめる」と大書きされたビラが配られました。福重清町長が自立を目指していたことは衆知の事実であり、まったくのデタラメ。町の将来を決める大切な合併論議にもかかわらずこのような謀略的な行為が行われてしまいました。
1月14日に同町に乗り込んだ橋本大二郎県知事は「合併すれば国道439号の改修予定を早める。全町にケーブルテレビを整備すればデジタルテレビでの難試聴に対応できる」と「確約」し、合併推進派は「橋本知事の確約を信じて合併を」と宣伝しました。
住民にとって極めて重要な生活道である国道439号線の整備を「合併すれば優先するが、自立なら後回し」という露骨な差別と利益誘導は、知事のこれまでの他町村での説明ではなかったものでした。
橋本知事のケーブルテレビ整備についての発言は「できるかもしれない」次元のことを既定路線のように住民に思わせるレトリック(誇張)と言わざるをえないものです。新四万十町の合併特例債借り入れ枠は約90億円。新町の財政計画では45億円を借りるとされています。一方でケーブルテレビを窪川町・大正町に引いた場合HFC(幹線は光ケーブルで各戸は同軸ケーブルで配線)タイプで試算が概算約26億円。ケーブルテレビ整備だけで特例債の実に6割を使い切ってしまうことになります。この他にも特例債の使い道である「計画」は道路整備や震災対策など多岐にわたっており、庁舎建て替えについては今後10年間で是非を検討するとされています。
庁舎を建て替えるなら45億円の特例債ではケーブルテレビや他の事業との両立は到底無理。ケーブルテレビをやめるか、45億円の枠を増やすかの選択になりますが、特例債借り入れを増やせば将来の財政計画が大幅に狂い、ケーブルテレビを実施すれば膨大なランニングコストが新町の財政を圧迫するという問題もあります。
窪川町・大正町・十和村合併協議会は「計画は具体的にはこれからプロジェクト委員会で話し合われて決まる。今はどれも確定したものではない。計画に書いてあることが全部できるわけではない。ケーブルテレビもやれるかどうかは分からない」。
他の合併協議会でも同様ですが「計画」はあれもやりたいこれもやりたいという願望を羅列したものに過ぎません。裏付けは乏しく、3月末の期限に駆け込むため課題を先送りした結果、大事なことは何も決まっておらず、合併推進のために持ち出されている議論とは大きく乖離しているのが現実です。