危惧される「駆け込み市町村合併」
日本共産党高知県常任委員 岡田和人
現行の合併特例法が3月末に期限切れすることから、「駆け込み合併」といえる動きが県下で相次いでいます。1月に入って佐川町と日高村が「合併調印」、大方・佐賀両町が法定協議会設置に調印、また県合併推進室の強力なテコ入れのもと県東部でも「飛び地」合併も含め、動きが急浮上しています。肝心のまちづくりでの十分な協議も、住民への説明も抜きに「合併」になだれ込むやり方に危惧を覚えざるを得ません。
1月30日に実施された大正町の住民投票では「町長は単独自立をあきらめた」という謀略ビラが投票日直前に配布されるなど「合併賛成」の動きはなりふり構わぬもので、投票結果が僅差であったことを考えると住民間に溝をつくり、今後のまちづくりをいっそう困難にしかねないものでした。
「三位一体改革」の名による地方切り捨ては、合併しようが、すまいがどの自治体にも大きな影響を与えるオールジャパンの問題です。一方で合併のメリットとされる首長や議員の削減効果は、予算の2〜3%の範囲と言われており、最大の「アメ」といわれている「合併特例債」も、借金に変わりはなくハコモノ行政が現在の地方財政危機を深刻にしたことを考えれば、アメが毒に変わる危険性も大きく、何より「三位一体改革」のもとで、住民の立場にたった行財政改革を行いながら本当に必要なところに税金を使い、行政と住民の協働が追求されなければならない時に、本質論をさけて「合併すればなんとかなる」かのようにことを運ぶことは、課題の先送りであり、より大きな破綻を準備する可能性ありといえます。
県内で「非合併」をめざす行政関係者に話を聞くと「同じ小規模自治体でありながら、年2億円も人件費が違う。少人数だが職員の力量もあがり、台風被害補償でも高い実績をあげている。単独でもやれるような行財政改革にどこもが取組まなくては合併の効果はない」(県西部の自治体)、「数年先を見越して住民本位に行財政改革に取組んできた。その成果をチャラにするのは納得できない。スタートラインを同じにする真剣な努力が必要」(県東部の自治体)などと語っています。また行政と住民の協働でも、住民が一体感をもって行財政改革にとりくむ点でも、単独自立の方が効率的とも強調しています。
県が強調している「住民力」発揮の方向で、まちづくりの真剣な努力をしている自治体も少なくありません。このような自治体を支援し、広げることこそが県に求められています。さらに県が入った広域行政による事務簡素化など、様々な形で果たす役割が県にはあるはずであり、「合併特例債のあるうちに」と本質論を外れて「合併推進」につき進むやり方は結局「あなた任せ」を拡げ、「住民力」の低下をまねき、まちづくりを困難にするだけでしょう。
4月以降も合併新法はあり、まちづくりの一環としての合併が不可能になるわけではありません。今必要なことは、地方切捨てをすすめる国の政治と対決するとともに、合併については「課題の先送り」でなく、地域の将来を見据え、まちづくり、住民自治の原点に立った議論と探求を進めることが大切になっています。