2005年2月13日


「国民保護法」 県内で具体化始まる 自治体の戦時態勢が進行


 急ピッチで進む戦時態勢 震災対応へのマイナス面も懸念される

忍び寄る戦時態勢づくり--。昨年成立・施行された有事法制の中で、国民との関わりが最も深い国民保護法(武力攻撃に事態等における国民の保護のための措置に関する法律)の具体化が高知県でも始まっています。2月県議会には関連条例が提案され、2006年度になれば市町村でも同様の動きが出てくることになります。
 
県は武力攻撃があった場合の基本的な対応方針(避難、救援、被害の最小化)である県国民保護計画を2005年度につくるため、諮問機関である県国民保護協議会の設置条例を2月県議会に提案予定。委員の規模は50人強で県、市町村、警察、国の各機関、陸海空自衛隊、NTT、JR、日赤、NHK,民放、土電、県交通、トラック、バス、フェリー関係団体、医師会、税関、有識者などから委員を選ぶといいまQす。2006年度以降は策定される県計画に基づき避難マニュアルが作成され、さらに市町村段階で消防・消防団。町内会や自主防災組織を巻き込み、訓練などの実践が取り組まれていくことになります。

これまで「危機管理」の中心的課題だった防災に「国民保護」というチャンネルが加わって二本柱になることになりますが、末端の県民のところでは防災組織が横滑りして「国民保護」の課題を負わされるのが実態です。

 「国民保護」とは何か

「外部からの武力攻撃」から「国民を守る」のが定義。「武力攻撃」とは@着上陸侵攻、A航空機による攻撃、B弾道ミサイル攻撃、Cゲリラ・コマンド。その主な形態である原発・石油コンビナートなどの破壊、新幹線の爆破、放射能を混入させた爆弾の爆発、炭疽菌やサリンの散布、航空機の自爆テロなどの攻撃から国民を避難させることが中心的な課題になります(県危機管理課)。

しかしこのように広範な「武力攻撃」を地方自治体が想定して備えることが果たしてできるのでしょうか。地震や津波、大雨など一定の予測がつく自然災害であればまだ備えようもありますが、高知県に適合した「武力攻撃」とは一体何なのか。「3月中に出される国の『モデル計画』待ち。具体的なものはまだない」(県危機管理課)。高知県にとって差し迫った震災対策の充実こそが求められています。

戦争に備えるための訓練に巻き込まれることに抵抗を感じる県民も多いことから、震災対策で重要な役割を果たす町内会や自主防災組織にも悪影響を及ぼしかねません。県危機管理課も「高知県にとって最も重要な危機管理は震災対策。自主防災組織にマイナスになることは避けなければならない」。

計画を知った県民からは「まるで防空頭巾をかぶらされた戦前の隣組の訓練のようだ」という声が出されたように、「戦争対策」が県行政に位置付けられ、市町村、住民組織の中にまで持ち込まれていくことは戦時態勢づくりにつながる危険な道。「武力攻撃」に備えるとは仮想敵をつくり「脅威」をあおること。これでは日本はアジアでますます孤立を深め、アジアの平和と安定に逆行する方向です。