2005年新年号に掲載


合唱組曲「悪魔の飽食」(2月20日かるぽーと)を指揮する

音楽家・池辺晋一郎さんにインタビュー 「未来を信じて希望歌う」


              高知城ホールで                                         

高知センター合唱団創立40周年記念行事として準備がすすんでいる「悪魔の飽食」の作曲家であり当日指揮をとる池辺晋一郎さんにコンサートへの思いを聞きました。


この作品は84年に神戸の合唱団の依頼で作曲したものですが、全国縦断コンサートととして取り組まれ2月の高知で16回目になります。中国や沖縄、京都などでも全曲歌われているので、縦断コンサート以外にもかなり歌われています。

■歌い継がれる理由 

作曲者が自分で言うのもおかしいのですが、この曲は歌うと取り憑かれるらしいです。日本が犯した罪の告発だけだったら、ここまでモチベーションは上がらなかったと思う。731だけでなく人間の恒久平和をめざす姿勢、未来を信じて歌い上げる最後の第7章を歌うと「また歌いたい」という気になる。全国に、この曲を歌うことをライフワークにしている人がいっぱいいて、作曲者としてはありがたいのですが、不思議な気がするくらいです。

全国縦断コンサートが始まった95年頃には「今世紀末まではやろうよ」と言いあってました。つまり「20世紀が終わるまで」と考えていた。人間がこんなに戦争をやりつづける世紀は、いくらなんでも今世紀で終わりだろうという思いがあったから。僕だけでなく多くの人がそう思ってた。21世紀がきたら人間はもう少し賢くなっているのではないかと。しかし9.・11テロは21世紀最初の年。悲しいことにこの歌がよけいに意味を持ち始めてしまいました。

作曲した人間としては非常に矛盾した言い方になりますが、「この曲はいつか歌われなくなるべきだ」と思っています。自分が作った作品が意味がなくなることを望むというのは本当におかしいことだけれども、僕の中に必ずあります。

■誇るべき振幅
 
731部隊の問題は、色々な意味で尾を引いてきました。「ミドリ十字」もそうですけれど、戦後日本を覆う重いくびきです。大量化学兵器、いまだにベトナムでは、アメリカが使った枯葉剤の影響が残っている。世界は人体実験や化学兵器から抜けきっていません。

日本は加害と被害、世界史上、非常に希有な体験をした国。あれだけ軍国主義的だった国が、今は本来軍隊を持つことができないはずの憲法9条をもち、軍国主義から世界の平和を率いるべき立場になっている。どうもこの世界に誇るべき振幅を認識できない人が、政治家も含めていっぱいいる。旧西ドイツのシュミット首相は「半世紀という時間は長いが、ドイツが再び過ちを犯さないと確約できるまでにはまだ短い」。50年を短いと言った。ところが日本の政治家は「50年もたったんだから」。こんな短い間に、また憲法を変えるというのは恥ずかしい。シュミットほどの度量がほしいですね。若い世代には日本が過去に何をやってきたかを知ることによって、そういうことをやった日本だからこそ、平和に対する思いがより強いというバネを持ってほしい。

■高知の合唱団の印象

反応がとても良い。率直で素朴。高知の県民性と思うけれど、細かいディテールはよく言えば大らか、別の言い方をすると大ざっぱ(笑)。どんどん良くなっています。テレビ画面の色調を変えるみたいな感じで、どんどん色がかわっていくのが面白い。

高知は、進取の精神が根づいているところだと思います。反骨精神、ある種の頑固さと、いごっそうですね。だから骨太の精神がある演奏ができると期待してます。


 ※全国縦断コンサートイン高知 2月20日(日)14時、かるぽーと。1部高知センター合唱団、2部森村誠一氏と池辺晋一郎氏の対談、3部混声合唱組曲「悪魔の飽食」全7章。前売一般・大学生3000円。小学生以上2000円。