2004年10月5日


橋本知事に対する道理ない辞職勧告決議案
                                      
   
                     2004年10月5日   日本共産党と緑心会・県議団      
 
 自民党県議団と県民クラブが、橋本知事に対する「辞職勧告決議案」を委員会に提出しました。再提出されれば、8日の本会議で賛否が問われます。決議案は、百条委員会の結論を前提にして、「知事は疑惑を一向に晴らそうとしていません」「毅然としてない県政で県民に不信感をあたえた」などとして、橋本知事に辞職を求めるものとなっています。しかし、この辞職勧告決議案は、百条委の調査が明らかにした事実や結論から見ても、まったく道理のないものです。以下、事実の確認とともに、私達の見解を示します。

調査の結果が示すものと知事の政治姿勢 


@知事は「関知も関与もせず」と明言
 
 まず、調査で明らかになったことを確認しておきます。そこには地元紙がとりあげなかった重要な事実が多々あります。そして、結論としては、知事は関与を明確に否定し、知事の関与を示す物証もまったく出なかったということでした。

「疑惑」は「確認できず」が調査の到達点

▽確定できた事実
 百条委員会が明らかにできた資金の動きは、「笠誠一氏の町田照代氏からの1億円の借入と返済」「パチンコ業者からの借入」と返済、笠氏が自分の口座に振り込んだ4000万円などです。

▽資金提供、使途、関与 … 確認できないものが多数 
 一方、「熊谷組から提供を受けた」という資金など、「疑惑」の肝心の部分は「確認できていない」(委員長報告)し、町田氏の1億円についても、その使途や返済した資金の出所も確定できていません。 

▽笠氏は「談合による選挙資金調達」を自ら否定 
 今回の「疑惑」の出発点は笠氏が書いたとされるメモと証言です。その内容は、談合によって知事選挙の資金を得た≠ニいうものです。-―「当時既に談合で落札が決まっていた共同企業体の代表業者を別の業者にひっくり返した。それでその共同企業体の代表業者と県内業者から金を出させることにした」(笠氏発言・昨年10月1日・高知新聞)
 ところが、笠氏は、@ダムの発注と裏金の問題は「あくまでも推測の域を出ない」(1月15日・証言) A「資金提供時に坂本ダムの話はなかった」(8月5日・証言)と、最初に「談合によって資金を調達した」という自らの発言をはっきり否定しました。この決定的な証言が、なぜか無視されたのです。

事実を飛び越え、一方的に断定した百条委報告

 百条委員長報告(元木益樹自民党県議)は、「町田氏から借りた1億円が主に選挙に関する費用の支払いに充てられたもの」また「笠氏が町田氏への返済資金を熊谷組や新進建設等から調達した」などと「判断」しています。これは、調査で明らかになった事実を飛び越えての一方的な断定です。

 しかし、このような一方的な断定にもかかわらず、百条委の結論は、知事の関与は「疑問が残る」という範囲での指摘にとどまっています。だからこそ、今回の辞職勧告決議案でも、選挙資金にかかわる「疑惑」については、まったくふれることができないのです。

▽談合疑惑の証拠もなく、企業の偽証告発も、処分もできず
 しかも、今回の調査では、談合を示す新たな根拠となる事実は発見できていません。橋本県政のもとで入札改善がすすむまでは、ほとんどの事業が99%、98%の高率で落札されており、坂本ダムだけに競争がはたらかなかったと証明できる状況にもありません。これが調査の到達点です。
 過去のデータから見て「高い落札率は談合の疑いが濃い」ことは一般論としては言えますが、客観的な根拠がなければ、談合問題の壁を打ち破れません。それは不正を追及してきた私達が身をもって知っています。

 あくまで、「談合が認められる」とするなら、「談合疑惑」を否定した関係者を偽証で告発し、入札の指名停止などの処分をすべきです。それができなかったことは、証明する根拠も材料もなかったということにほかなりません。それにもかかわらず「談合を認めざるをえない」とすることは、議会が、事実に立たず、数の力で政治的な思惑で断定をするという悪しき前例をつくったものです。

▽くるくる変わる不自然・無責任な笠氏の証言の数々
 今回の事態の特異さは、百条委たちあげのきっかけをつくった笠氏が、「橋本四選阻止」という政治的立場を鮮明にしていること、さらに、証言の内容も、矛盾する内容を語ったり、二転三転するなど極めて不自然で、無責任だったことです。@自らの口座に振り込んだ4000万円については、事実が明らかになるたびにそれをとりつくろうとし、矛盾する内容を平気で語っている。この4000万円を自分のものにしたという疑惑もうまれている。 A知事選挙前に、橋本4選を阻止する目的で、「証言」した談合にかかわる内容を、百条委員会では、あっさり翻し否定している。B疑惑の核心となる資金の「使途」については、「忘れた」とまじめに語ろうとしていない。

知事から排除された笠氏が、私怨から、自らかかわった企業との関係のうち、「橋本4選阻止」に利用できる材料だけを取上げて構成し語っているようにしかみえません。

A知事は説明責任を果たすと県民に約束

 辞職決議案は「知事は疑惑を一向に晴らそうとしていません」と決め付けていますが、決してそうではありません。

百条委の結論からも辞職勧告は道理がない

百条委員会が結論として求めたものは、@「知事の可能な限りの説明責任」、A「県の名誉回復のための努力」、B「談合疑惑が発生しないような対策の具体化」です。橋本知事は、説明責任は果たすと明言。また、入札制度も改善の作業中です。この点からも知事に対する辞職勧告は道理がありません。

B透明性と県民参加--知事の基本姿勢は明白


この13年、しがらみを断ち切り、県政改革を推進

 この13年間、橋本知事の姿勢は、全体としては、県民が期待するきれいな政治に近づけてきました。知事のこうした基本的姿勢は、平成4年当時すでに、みずから「天の声」にと述べた笠氏を排除したことにも示されています。

 その後、情報公開の前進、ヤミ融資事件の教訓に立って、ゆがんだ同和行政の一掃と念書の公表、体育協会人事の改善、「はたらきかけ要領」の策定、そして今回の特定企業の不当な働きかけを許さなかった対応など県政の透明度を高めています。また、全国2位の低入札率へと改善がすすんできていることなどは、評価できるものです。


真に解明すべき問題は何か 

@ 問題の発端

不当な要求を拒否した知事の4選阻止が動機

 今回の問題の発端は、国分川の川底を県に高値で買い取らそうとし、知事に拒否された和住工業社長が橋本4選阻止という思惑から、同じく知事に「天の声」になる危険があると排除された笠氏に相談。そこに政治的意図で一致した自民党県議団らが乗っかって、今回の疑惑なるもののメモを見せ、知事に出馬辞退を迫り、拒否をされたことからはじまったものです。

 そして、県議会でこの「疑惑」が取上げられた直後に、以前から自民党が出馬を働きかけていた松尾徹人高知市長(当時)が突如、市長職を投げ捨て、知事選への出馬を表明するというシナリオが進行しました。松尾氏が特定勢力の圧力に弱いことは、高知市長時代が実証ずみです。県政改革の流れのなかで、しがらみを切られてきた勢力が、昨年の知事選で、橋本県政阻止に動き、そして辞職勧告決議の動きに出ているといわなければなりません。

今、なぜ13年前の「疑惑」か 

 ここで、あらためて、橋本県政全体の流れの中で整理してみます。

@ 橋本県政の十三年間は、しがらみを断ち切り、透明性を前進させてきた。その過程で、しがらみを切られた勢力が、知事攻撃の先頭にたっていること。

A 巨額の資金をうごかしているといわれた笠氏を、知事が「天の声」になる危険性を感じ、排除した。その判断と対応は、その後の県政改革の流れと一致し、正しかったこと。

B 笠氏が関わった資金の調達先、使途は不明であり、資金と談合との関係も笠氏自身が否定している。知事が関与したとの証拠はまったくないこと。

 ――― このことから総合すると、13年前の知事選で、草の根型の政治をめざす勢力とは別に、笠氏など自民党型の金権政治の新たな構築をねらう逆流が存在したことがうかがわれます。知事は、その逆流をはねのけ、県政改革を進めてきましたが、しがらみ県政の復活をねらう勢力が、橋本4選阻止を目的とする笠氏の無責任な発言と部分的事実を結び付け、金権腐敗があったと無理やり推論し、その全責任を知事におしつけて、今日の県政改革の流れを押しとどめようとしていると判断せざるを得ません。

A 問われる自民党、県民クラブの説明責任

 13年前の疑惑の解明を言うなら、まず問題提起した側の真摯な真相解明が問われています。私達は、真相解明のために以下のことを強く求めます。

@「金額としては一番大きかった、ある政党への金」など、笠氏は、資金の使途など肝心なことを語るべき

 疑惑の解明には、笠氏が資金の多くの使い道として自ら述べた(3000万円と噂される)「ある政党への金」の流れなどの事実を隠さず、全容を県民の前に明らかにすべきです。

A「政党にわたした」(笠氏)―― 県民クラブは説明責任を果たすべき

 笠氏の電子手帳には旧社会党や労組の関係者と連絡をとったとの記録が残っていますし、旧社会党は1期目の選挙で唯一知事を推薦した政党です。その関係者が県議として現在所属しているわけですから、これらの疑問に答える責任があります。

B「談合クロ」について自民党県連会長は、説明責任を果たせ

 談合を名指しされた大旺建設グループは、自民党県連会長(中谷元衆院議員)の親族が経営し、県連会長や自民党に多額の献金をしてきました。真実はどうだったのか、中谷会長は自民党県連を代表し、明確な説明をすべきです。

C「談合クロ」認定した企業から長年多額の献金をうけている自民党

 談合は、入札に参加した企業が協力しないとなりたちません。坂本ダムの入札に参加した県内企業8社から自民党関係団体に多額の献金が渡っています。「見返りのない資金提供はない」(百条委報告)という言葉は、自民党にこそ、はっきりと説明してもらわなければなりません。

19982000年度に1億円の献金

大旺関連   2370万円 ミタニ建設 1651万円
四国開発   1356万円  香長建設 1250万円
轟  組   1188万円  関西土木 1136万円
竹内建設    754万円  新進建設  430万円
( 国分川問題の和住工業からも332万円)
・2002年度も8社から自民党へ約2000万円

B公共事業をうけおう企業からの献金の禁止を

 今回の問題で県民が期待しているのは、談合や不当な働きかけを許さず、清潔で県民本位の県政を築くということです。特定の政治的意図ではなく、県議会が、真に県民の願いに応えるためには、今後は、談合を事実上認定した企業はもちろん、公共事業を請け負うすべての企業から、合法非合法を問わず一切献金を受け取るべきではないとの決意を示すべきです。なによりも、談合を名指しされた企業からの献金を受けつづけている自民党や政治家こそ姿勢が問われているのではないでしょうか。
 

地方切り捨て、自治体いじめの自民党の、県政改革への攻撃をうちやぶろ

 今、県政は深刻な財政危機におちいっています。その最大の原因は、自民党政治による地方切り捨て政策の結果です。「三位一体の改革」の名で、自治体いじめをする自民党が、県政においても「しがらみ」復活をねらって、自ら「談合クロ」認定をした企業からは長年にわたり多額の資金をうけながら、13年前の「疑惑」、不確かな材料で、県民の立場にたった県政改革に攻撃をかけています。  

 私たちは、13年前の選挙においては、橋本知事に対しては対立候補を立てて戦いましたが、今日、知事自身の姿勢と施策の変化にもとづいて評価すべきは評価し、問題点については厳しく批判し、県民の立場に立って県政に関わってきています。今後ともこの姿勢で全力をつくすとともに、しがらみ県政の復活を阻止するために、道理のない行動とは、きっぱりと対決をしていきます。