「事実に基づかぬ一方的断定」 百条委報告に田頭文吾郎議員(共産)が本会議で反対討論
田頭文吾郎議員 |
9月21日の県議会9月定例会に提案された坂本ダム等調査特別委員会(百条委)の報告に対する田頭文吾郎議員の反対討論の要旨を紹介します。
反対理由の基本は、百条調査特別委員会が明らかにした客観的な到達点からは到底確定しようがない「1億円の返済資金は熊谷組や新進建設等から調達した」との判断、談合業者を偽証告発もできないのに事実上談合を認定する恣意的な結論づけをしていることです。
百条委が明らかにできた金の動きの事実は、報告書に書かれているとおり「笠氏の町田氏からの1億円の借入と返済」、「パチンコ業者からの借入と返済」、「笠氏が自分の口座に振り込んだ4000万円」。それ以外は報告書自ら「確認できていない」としている項目が極めて多岐にのぼっています。
例えば、肝心の部分の平成3年12月26日の3000万円(受け取り)は「熊谷組から提供を受けたと証言しているが裏付は取れていない」、平成4年2月27日の3000万円についても「裏付は取れていない」とされている。さらに建設6社からの1億円の資金提供も、報告書には「残り9000万円について他5社は認めていない」、「資金が選挙資金に使われたのかは確認できていない」。12月19日の2800万円については「資金の出所は、建設6社からの1億円の残金かどうかの確認ができない」となっています。
これが百条委員会の到達点です。この前提があるからこそ、委員長報告の結論では、「巨額な資金提供をしたのではないかとの疑惑は残っている」としか書けないのです。
しかし委員長報告はいきなり「町田氏から借りた1億円が主に選挙に関する費用の支払いに充てられた」、「笠氏が町田氏への返済資金を熊谷組や新進建設等から調達した」と断定しています。この判断の根拠はどこに示されているのでしょうか。
今回の「疑惑」の出発点は笠氏が書いたとされるメモと証言でした。笠氏は、昨年10月1日の高知新聞で「当時既に談合で落札が決まっていた共同企業体の代表業者を別の業者にひっくり返した。その共同企業体の代表業者と県内業者から金を出させることにした」として、ここに今回の構図、談合と平成3年知事選資金とのつながりが「疑惑」とされたのでした。
ところが、笠氏は1月15日の証言で、メモでは平成6年とされていた時期を平成3年〜4年へ2年間もさかのぼる訂正をおこない証言の矛盾を呈しました。さらに笠氏は「ダムを熊谷組に発注することによって、裏金をつくって返済したらどうかという話は、間島さんと小川さんの間であったかもわかんないと。本人からきちんとした話は聞いておりませんからね。あくまでも推測の域を出ない」と証言。8月5日の証言では「そのお金がどの工事でどうするということは知らなかった」と述べています。
笠メモの内容は、笠氏自身の記憶とも当時の認識とも全く違ったものであり、メモは別の人物が準備したと考えても不思議ではありません。「疑惑」の構図の基本を笠氏自身が否定しているのです。
また笠氏が選挙資金について真摯に事実を明らかにする気があるのなら、当事者であるのですから、その多くを使ったと自ら述べた「特定政党への金」をはじめ、全容を真摯に県民に明らかにすべきではありませんか。この不自然さは笠氏が当初から目的を「橋本4選阻止」と公言してきたことと不可分のもので、報告書が百条委員会の権限を逸脱して一方的な証言を根拠に選挙資金の使途を「判断」していることも承服できません。
談合について委員長報告が「行われたと認めざるをえない」と結論付けているのも問題です。談合の時期すら示すことができず、百条委設置より前に明らかになっていた10項目以外、新たに根拠となる事実は、残念ながら見い出すことができませんでした。
10項目のほとんどは昨年の監査委員会報告で述べられていますが、結論は「本体工事が談合であったと断定することはできない」としており、事実認定の発展がないのに、これまでの議会や監査委の判断を、解釈を変えることのみで踏み越えることは論理上の飛躍と無理があります。県議会が談合を認定するなら、関係者を偽証で告発するだけの新たな根拠を示す責任があります。
報告書の総括部分について申し上げます。坂本ダムの談合疑惑は13年前ですが、ここでは、その後に起きた問題も含め橋本知事の対応がどうであったかが検証されるべきです。知事は平成4年当時、自ら「天の声に」と述べた笠氏を排除、その後、県政の透明度を高める努力を貫いています。ヤミ融資事件の教訓に立ち、今回の特定企業の不当な働きかけを許さなかった対応も正当に評価されるものと考えます。
委員長報告の主要な問題点は、客観的な事実にもとづかない一方的な断定です。今回の「疑惑」なるものが、業者の不当な要求の失敗と橋本4選阻止という特定の政治的意図から出発し、最後までその思惑が貫かれたことが背景にあるとしか言いようがありません。
今回の問題で県民が期待したのは、談合や不当な働きかけを許さず、企業と政治家との金によるゆ着を断ち切って、県民本位の県政を築くことでした。特定の政治的意図ではなく委員会が真に県民の願いに応えるなら、談合を認定した企業はもちろん公共事業を請け負うすべての企業から、合法非合法を問わず一切献金を受け取るべきではないとの決意を示すべきであります。談合を名指しされた企業からの献金を返済もせず、受け続けている政党や政治家の姿勢が問われているのではないでしょうか。
私たちは13年前、9年前の選挙で橋本知事に対立候補をたてて戦い、知事の姿勢と施策の変化にもとづいて評価すべきは評価し、問題は厳しく批判してきました。一貫して政官業の癒着を断って談合防止に向けた具体策を提起し、議会内外で清潔な政治実現をめざしてきました。今後ともこの姿勢で全力を尽くす決意を述べ討論とします。