県議会百条委 坂本ダム談合をクロとする報告書を多数決で押し切る
証拠もないままクロと多数決で「認定」した百条委
県が発注した坂本ダム工事の談合と、平成3年当時の橋本大二郎県知事の「選挙資金疑惑」について昨年10月から調査してきた「県議会・坂本ダム等に関する調査特別委員会(百条委員会・元木益樹委員長)」は13日に最後の会議を開き、坂本ダム工事は談合によるものだったと断定する報告書 (PDF形式)と、9月県議会への委員長報告を自民、21県政会、県民ク、公明、森祥一議員の賛成多数で押し切りました。報告書に反対したのは日本共産党と緑心会と県政新風会。委員長報告には両会派に加え21県政会のうち黒岩直良議員が反対しました。
1年に及ぶ同委員会の調査で判明した中心的な事実は、@町田照代氏が経営する会社と笠誠一氏の間に1億円の貸借があった、A橋本後援会の銀行口座に数千万円の入出金があった、B笠氏が自らの口座に4000万円を送金していたことでした。
笠氏と町田氏の間の1億円の貸借、笠氏と熊谷組との癒着について明らかになったものの、坂本ダム工事は談合だったのか否か、「裏金」が選挙資金に充当されたのか、橋本知事がこれらのことを知っていたのかなど肝心な部分については疑問は残るものの進展がなく、笠氏と地元紙が打ち上げた「坂本ダム落札が決まっていた業者をひっくり返して、熊谷組から金を出させることにした」というシナリオも、笠氏自身に「資金提供時に坂本ダムの話はなかった。ダムの話は後で聞いた」(8月5日の証人尋問)と否定されてしました。
■証拠ないままクロ認定
報告をまとめるにあたってもっとも対立したのが坂本ダム工事の談合についての記述でした。当初元木委員長が示した案では「談合が行われた可能性が高いと推測する」という物証がない中での一定常識的な表現でしたが、県民クラブの坂本茂雄委員の提案を受け「談合が行われたと認定するものである」という内容に委員長案が変更。
あまりの極端さに自民に同調する委員からも異論が出たために「認めざるを得ない」という表現に再度変えて多数決で押し切りましたが、「認定する」と「認めざるを得ない」では意味に大差はなく、坂本ダム工事は談合されたものであると断定したことになりました。証拠がないにもかかわらず県議会の機関が多数決で強引に談合と決めつけたことは今後、波紋を広げそうです。
県政新風会は「談合は立証できなかったが、可能性は否定できない」、日本共産党と緑心会は「談合の事実があったとは断言できない」に加え「公共工事に関わる談合をなくすために公共事業を請ける企業からの献金の禁止すべきだ」という内容の修正を提案しました。
■企業献金の禁止こそ
報告書が「昨年の知事選で橋本知事が『毅然として隠し事のない県政』を公約してきたにもかかわらず、坂本ダムの談合疑惑は県民の信頼を著しく失墜させた」、「何の見返りもなく資金が提供されたとは考えられない」としていることに対しては、田頭文吾郎議員が「坂本ダムの談合が行われたと言っているのは12年前のことで、順序がおかしい。高知県の公共工事は橋本知事のもとで不十分さはあるが全国2位の低落札率になるなど改善されてきている」、「見返りのない資金提供がないと言うのなら、坂本ダムに入札した企業から献金を請けた県議・政党は返すべきだ」と指摘しました。
百条委の報告書は9月21日に開会される9月定例県議会で採択されることになりますが、連動して自民党や県民クラブが知事の不信任案を提出する動きが活発化しています。