なぜ繰り返される特定市民問題 下元博司・高知市議にインタビュー
公正な市政確立は急務だ
高知市の業務に関わって市職員にささいなことから執拗に「苦情」をふっかける「特定市民」の圧力に屈して、幹部職員が「解決」のため現金を支払い土下座をさせられたり、「特定市民」が経営する飲食店に通わされるなど考えられないことが行われていたことが高知市政の大きな問題になっています。日本共産党高知市会議員で元同市職員の下元博司さんに、「特定市民」問題の背景を聞きました。
下元博司市議
−−どうしてこのようなことが起きるのですか。
下元 市議会建設委員会の審議である部長が「市役所には、こういう問題は自分のところで片付けておかないと出世に差し障りがあるというような考えがある」と言っていましたが、確かにそれは一つの原因だと思います。
また現場の担当職員と管理職の間に、問題があった時にすぐ報告して、一緒に解決する関係ができていません。「現場でやっちょけ。ややこしいことを上まであげてくるな」という管理職の体質があります。
−−下元さんが職員の時はどうでしたか。
下元 僕が職員の時にもそういう感じを受ける時もありましたが、逆に「現場が正しいと判断したらそれで住民と対応しろ。問題が起こったらワシが責任とるき」と言ってくれる課長もいました。こう言われると職員も意気に燃えて責任を自覚して頑張ります。こういう上司と部下の関係が今はできていないのではないでしょうか。これをどう築き上げていくかが大切ですね。
決定的なトップの姿勢
−−この問題は松尾市政時代からクローズアップされるようになりました。
下元 松尾市長の時には、市長自身が「特定市民」と「お付き合い」をしていました。トップが毅然とした態度をとれないと、市役所全体が声の大きい市民に屈していく流れになっていきます。県は弘瀬勝氏の問題などで橋本大二郎県知事が積極的に動きました。県と高知市との一番の違いはトップの姿勢ですね。「大きな声に弱い松尾さん」というのは末端の職員にまで浸透していました。
同時に幹部の資質もあると思います。今高知市に部長は10人以上いますが、「特定市民」に難癖をつけられても毅然とした態度をとった人もいます。その部長には「特定市民」も次から言ってきていません。管理職の個々の資質も問われています。
不公正な市政正す契機に
−−下元さんは「特定市民」問題を市議会で取り上げてきましたね。
下元 僕はこの問題を2回、本会議でとりあげました。当時の松尾市長は「毅然とした対応をとります」と答弁しましたが、今、明らかになってきているのは、松尾時代からのものばかりです。実際には口だけでした。いくら市が対策要綱・マニュアルだけ作ってもだめです。職員の資質を高める市役所全体の決意がないと、作るだけになってしまう。
下元 声の大きな人の言うことを聞くということは、声の小さい人の言うことは聞かないということにどうしてもなっていきますから、声の大きな人への対応、現金を要求されるような問題対応と同時に、今の行政の中にまだある不公正なやり方にも目を向けなければいけません。
この際、これまでの市役所の仕事のやり方、市民対応におかしなことはないのか。「Aさんが言ってきてもやらないが、Bさんが言うとやる」というようなことはないか。公正な行政執行をどう確立していくかが求められていると思います。
−−難癖をつけるのは「特定市民」だけでなく市会議員にもいると聞きますが。
下元 自分の職員時代の経験から言っても特定市民だけでなく、「特定議員」の問題はかなりあります。交通安全対策の職場で働いていた当時、地域住民から「ガードレールを付けてほしい」という要望があったので付けたことがあるのですが、地域の市議から「俺に連絡なしに何でやったのか」と難癖を付けられ、「お前のクビは俺が一太刀抜いたらとれるぞ」と凄まれました。市会議員が市役所の人事に介入したり職員を恫喝するようなことがあってはなりません。「特定市民」と同時に「特定議員」問題の解決も公正な市政を確立していく上で大きな問題です。
岡崎現市長の対応
−−岡崎誠也市長にはきちんとした対応をしてもらえるのでしょうか。
下元 岡崎市長自身が部課長時代、市の幹部職員が揃って「特定市民」が経営する店に行ったこともありましたので、当時岡崎市長にそういうことがなかったのかどうか市長自身、明らかにしなければならないと思います。
市議会の議論で執行部は「金銭要求があったことはどの段階まで報告されていたのか」という質問に「それを言うと個人が特定される」などというおかしなプライバシーを持ち出して答えないなど、事態の解明に積極的とはいえませんし、松尾前市長も「ちゃんとやります」と繰り返していたわけですから、岡崎市長がどこまで毅然とした態度をとれるか、これからしっかり見ていく必要があります。