2004年8月6日


県議会百条委 「熊谷組の資金提供時に坂本ダムの話は出ていない。最初の時点では分からなかった」と笠氏重大証言  


                   8月5日の県議会百条委

県が発注した坂本ダム工事の談合と、平成3年当時の橋本大二郎県知事の「選挙資金疑惑」について調査している「県議会・坂本ダム等に関する調査特別委員会(百条委員会・元木益樹委員長)」は8月5日に会議を開き、橋本大二郎県知事と当時選挙に関わった笠誠一氏を証人尋問しました。この中で笠氏は、「疑惑」の根本にかかわる坂本ダム工事受注の見返りに熊谷組から資金提供を受けたという話を覆し、「資金提供を受けた時に坂本ダムの話は出ていない。最初の時点では分からなかった」と重大な証言変更をしました。

笠氏の証言変更によって、昨年10月1日「高知新聞」の「談合で落札者が決まっていたのをひっくり返して金を出させることにした」と笠氏が述べているインタビュー記事や、笠氏自身がこれまで何度も繰り返し証言してきた「熊谷組四国支店長の間島氏に相談したら坂本ダム工事の受注で金を出すと提案を受けた」との発言(間島氏は平成4年3月死去)など「疑惑」の重要な部分が成り立たなくなりました。尋問を通して、笠氏と町田照代氏との金銭貸借、笠氏と熊谷組の癒着があったことについて、かなり明らかになったものの、坂本ダム工事受注の見返りに熊谷組から資金提供を受けたという「笠証言」の核心部を笠氏自ら最後の尋問で否定する結末になりました。(写真は証言する笠氏)

また笠氏は自分名義の口座に合計4000万円もの巨額の金を選挙資金から還流させていたことについて、今年2月28日に自ら同委員会に提出した「弁明書」で「(義兄に借りた)3000万円のうち2000万円を振込み返済を済ませた。不足分の1000万円は交通費として使ったことを姉に話して(義兄が1月に死去したため)了解を得た」と説明していたこと整合性のない不可解な主張をしました(今回は3000万円全額を返済したと言っている)。

笠氏はこのように、またもやこれまでの証言を大きく二転三転させながらも、「町田照代氏や熊谷組から資金提供してもらうことは橋本知事に報告していた。知事が知らないことはあり得ない」と強調しました。笠氏の質問時には、元木委員長が委員の質問に割り込み「質問を変えよ」「なぜそんな追及をするのか」などと異常な介入を繰り返しました。
 
一方、橋本知事は「1期目の選挙は高知に着いたその日から候補者として走り回っており選挙資金については知らなかった」、「資金提供の報告を受けたことはない」と証言し、「報告していた」とする笠氏の言い分とは真っ向から対立。同時に「表に出しにくい領収書の説明を受けていても不思議ではない」と「表に出しにくい支出」の説明を受けたことを認め、町田氏からの金の貸し借りについて「自分の選挙事務所でこのような金のやりとりがあったことには倫理的責任を感じる」と述べました。

百条委の証人尋問はこの日で終わり、今後は報告をまとめる作業に入っていきます。まとめにあたっては、党略的な思惑や推測を入れるのではなく、明らかになった事実に基づいたものにすることが重要になっています。
  
   証言する橋本知事


笠氏と委員のやりとり(抜粋)

元木委員長(自民) 提供された資金が坂本ダムの談合によって捻出されることを知ったのはいつの時点ですか。

笠証人 (町田氏に)返し終わって、坂本ダムの話が出始めたころですね。それ以前は私は業界のこととか、県の発注の工事に何があるかということは知らなかったですね。

武石利彦委員(自民) 昨年10月1日付の高知新聞のインタビューで「すでに坂本ダムは談合で落札する共同企業体の代表業者が決まっていた。それをひっくり返して金を出させることにした」と言ってますが、決まっていた代表業者をひっくり返すために、知事に「天の声をだしなさいよ」と言うとか、副知事に直接話すとか、土木部の幹部に働きかけをしたとか、そのへんの作業はどのようなことをしましたか。

笠証人 それはやってないです。私自身はね。業界の人から後で聞いたんです。熊谷組から資金提供を受けることは知事に言っていましたが、それだからどうだとかこうだとかいうことではないです。

武石委員 ひっくり返す作業は直接業界側がやったということだと思いますが、発注する県側が符合する動きをしなければ予想した結果は得られないわけで、このことについて証人は何か聞いたことはありませんか。

笠証人 ありませんね。

坂本茂雄委員(県民クラブ) 熊谷組の間島支店長にコンタクトをとったのは新進建設の小川さんの紹介ということですが、小川さんは「非常に迷惑している。何で私が呼ばれなければならないのか」、「デッチあげられている気がする」と証言されています。小川さんの紹介で間島さんが坂本ダムで資金を作るという提案があったことは事実ですか。

笠証人 いや、坂本ダムということは出てないですね。

坂本委員 その時に坂本ダムは出ていない。

笠証人 出てないですね。資金を提供するとは言ってました。

坂本委員 小川さんが紹介してくれたことは間違いない。

笠証人 間違いないです。小川さんの車で一緒に間島さんの葬式に行ってましたから。小川さんが紹介しなければ一緒に行くことはない。事実です。
 
坂本委員 間島さんから資金提供はする。その後、坂本ダムが話に上りだした段階で、工事で金を作るということを理解された。
 
笠証人 理解したというより、業界のことは分からなかったんですよ、私自身は。ただ熊谷組が資金提供してくれるということは知ってましたけど、その金がどの工事でどうするということは知らなかった。

坂本委員 証人に提供された資金が坂本ダムの談合によって捻出されたのはいつの時点ですかという委員長の質問に対して・・・。

笠証人 後ですよ。

坂本委員 ダムの話が出始めたころということで、返し終わってからということではあるわけですけれど。

笠証人 最初の時点では分からなかった。

坂本委員 ダムの話が出始めた頃、ダムで談合すると分かったのは、笠さん自身の理解であって、誰かに教えられたということではない。

笠証人 ないです。