2004年7月10日


物部村が合併アンケートで「県が合併しないと財政支援は行わない」と村民の不安あおる


 土佐山田町・香北町・物部村による香美市への合併の是非を住民に問う「アンケート」が物部村内で始まっていますが(7月20日までに回収)、村が配布した用紙には一方的に「合併やむなし」と書いた資料が添えられ、村民の公平な判断をあおぐものとはほど遠い「アンケート」になっています。

村が示した財政シミュレーションでは合併すると歳入が平成24年(8年後)までほぼ維持される一方、単独では歳入が激減するとされていますが、計算の根拠は示されていません。橋本知事が7月4日に同村で「地方交付税がどうなっていくかということを将来に渡って確たる根拠を持って語ることはなかなかできない。どちらが損か得かということは正直言って色んな言い方ができる」と言ったように、計算する者の意図で数字は操作することができますから、少なくとも村が村民に合併の判断材料として提供する情報であれば、歳入・歳出の内訳など計算の基本部分を分かりやすく示すことは最低限の責任です。

まして地方交付税が11年後から急速に落ちこむことが明白にもかかわらず、それを村民に隠したままの試算になっていることは、まじめに村民に財政を説明する姿勢が感じられないものです。

また「単独では住民サービスの低下や税負担の引き上げは避けられない」と村民を脅し、合併すればあたかも現行水準が維持できるような印象を与える記述もありますが、「合併をすればどうにかなるのかと問われれば、決して、はいと素直に答えることはできません(橋本知事、7月4日の説明会)」というように、合併しても多くのサービスが維持されるのは経過措置で数年間だけであることや、決定できずに先送りされていること、合併により70億円以上の新たな借金をして土佐山田町に役場の新庁舎を建てることなど、合併の判断にあたっての肝心な情報が欠落しています。一方な情報で、村民を特定の方向に誘導することは許されません。

県部長の発言も歪める

アンケートに添えられていた村長名で書かれた「アンケート調査にあたって」という文書には、「企画振興課長は、県と市町村の協議において財政悪化の中で、合併しないところには、財政支援は行えないと明言しております」と書かれ、合併をしなければ県から懲罰的に支援が受けられなくなるような印象を与えています。

発言を確認するため調べてみると、企画振興課というセクションが県には存在しないため、村総務課に確認したところ、「企画振興部長の間違い」との回答。十河清・県企画振興部長に発言を確認しました。

十河部長によると「6月4日の市町村長と県との会議の時の発言で、土佐清水市から出た『合併したくてもできない市町村に特別な補助はできないか』という質問に答えたもの。県も金がないので、これ以上の特別な支援は無理だと答えた。具体的な話ではない。合併しないと『元気の出る市町村総合補助金』で差をつけるとか、ペナルティを課すというような意味ではない」と回答しました。

県幹部の発言を意図的に歪め、合併しなければ補助金が削られるような印象を与える不正確な記述はフェアとはいえません。また同村は7月20日にアンケートを回収しながら、土佐山田町の住民投票が行われる予定の8月1日まで結果を公表しないことにしていますが、仮に物部村が反対が多数だった場合、土佐山田町の住民投票自体が無意味になってしまうことから、なぜすぐ結果を発表しないのかという声もあがっています。

市町村が置かれている状況がきびしい時だからこそ、村民が正確な情報を共有してよく話し合い、行政と力をあわせていくことが大切です。このような「アンケート」のやり方は、今後のまちづくりに禍根を残すものではないでしょうか。




物部村がアンケート用紙に添えて配布した文書