市町村合併に反対する住民の判断が相次いで下っていることにたいしての県の対応について、岡田和人氏(日本共産党県常任委員)から寄せられた論文を紹介します。
市町村合併反対が相次ぐ理由
岡田和人
最近、住民投票やアンケートで、相次いで「市町村合併反対」の意思が示されています。この事態に対し、県企画振興部長が「住民の関心が薄いまま合併の方向性が決まっている」というコメントを出しましたが、一連の結果は住民の中で「市町村合併」の実態について理解が広がってきた結果です。
そもそも、究極の自治体リストラである「平成の大合併」を押しつけるため、誤まった情報が洪水のように流され、合併への大きな流れが作られてきたのが当初の状況でした。
「合併したら地方交付税は減らない。合併しなければ減る」というウソが行政関係者からも語られ、作為的な財政シュミレーションが示されてきました。合併推進勢力からは「合併特例債で金がくる」というような不正確な情報が大量に流されました。「合併すれば120億円を春野町のために使える」という荒唐無稽な話まで出ています。
誤った情報に対し日本共産党をはじめ多くの団体・県民が、住民が正確な情報で判断できるように努力してきました。先行的に合併した他県の自治体の実態が、誤まった情報を是正する力となり、合併推進勢力が振り撒いてきた「幻想」が打ち破られてきたのが、この間の事態です。むしろ誤まった情報によって「合併やむなし」という雰囲気がつくられていた時に是正の努力をしなかった県の姿勢こそ、大きな問題があります。コメントは「合併ありき」という偏った立場から出発しているといわなければなりません。
@「合併」「非合併」にしろ、自立への努力が必要ですが、「合併」と「非合併」で基本的に制度が変わるわけではなく、合併したら「自立」できる根拠はありません。合併自治体には、助走期間のための特例措置があるだけです。コメントは合併しない場合だけ「これまでの負担のままで行政サービスを維持するのは困難」と述べていますが、合併したところでも同様であり、合併したら行政サービスが維持されるかのような印象を与える発言は、不適切です。
南アルプス市など先行的に合併を経験している山梨県の市町村課は「合併したからと言って財政状況が良くなるわけではない。合併後の努力が最も必要となる」(「毎日新聞」3月16日)と述べています。
むしろ「サービスは当面維持」といった手法で課題を「先送りして」、合併になだれ込もうとしている多くの法定協議会のあり方こそ無責任であり、県がコメントするなら、当然、取り上げられるべき問題です。
Aコメントは「広い視点でまちづくりを考え、判断をお願いしたい」と述べていますが、広い視点のまちづくりは、広域行政を担当する県の役割が第一であり、さらに一部事務組合など複数の自治体による広域行政など様々な方法があります。 実際、県は縦割り行政を打破し、「四万十川対策室」を全国に先駆けて立ち上げて流域自治体等と連携をとり、広い視点のまちづくりを進めてきました。合併が進んだとしても、より広い視点のまちづくりの取組み、県行政の役割が不必要になるわけではありませんから、この問題を「合併」の根拠にすることは的外れといえます。
B来年3月以降の新たな合併特例法は、1999年以降肥大化させてきた特例的な財政措置などを99年以前の状態に戻して残す内容のものであり、コメントの「特例法の期限まであと10カ月」という表現は、県民を追いたてる不正確なものです。「合併ありき」で、課題を「先送り」するのでなく、しっかり議論することが必要です。
最後に。この間の「合併ノー」の選択は、地方の切り捨てをすすめる「押しつけ合併」と「三位一体の改革」に対する県民の強い抗議と怒りを示したものです。この声を信頼することが、橋本知事を先頭として県政運営に強く求められています。(日本共産党県常任委員)