江の口保育園保育料不正使用問題で、日本共産党高知市議団が5月18日、発表した声明の全文を紹介します。

理事に市会議員、問われる議会の姿勢

江の口保育園幹部による公金詐取疑惑の徹底究明を

                      2004年5月18日 日本共産党高知市議団

高知市の江の口保育園(社会福祉法人・江の口保育園運営協会 田能満寿夫理事長)は定員を超えていたにもかかわらず、定員割れの時しか本来は認められていない「自由契約児」を理事のコネなどで、毎年数人入園させ、その実態を市に報告せず、保育料を裏金としてプールし、海外旅行や宴会費用に使っていた問題が明らかになりました。

日本共産党高知市議団は、この間、関係者の内部告発をうけて、一定の事実関係を調査してきました。その内容は、背任、横領ともいうべき極めて悪質なもので、しかも、同園の理事には、岡村康良(公明党)高知市議と浜川総一郎(新風クラブ)高知市議が就任しており、市議会自身の姿勢が問われる問題です。また、市政との関わりでも重要な問題を含んでいることから、日本共産党は、百条委員会の設置や刑事告発も視野にいれ、真相を徹底追及し、責任の所在、再発防止策を明確にし、議会に対する市民の信頼を回復するために全力でとりくむ決意です。

裏金、架空請求、ピンハネ 市民から通報のあった疑惑の数

理事長も認めた事件の概要は、保護者から現金で集めた「保育料」は、わかっている5年間だけでも1400万円にのぼり、それを裏金としてプールし、海外旅行や宴会費用に使っていたことです。 

旅行は99年グアム島、00年韓国、01年淡路島、02年皆生温泉。韓国旅行の時は、1時間ほど韓国の保育園を見学したもののあとは普通の観光旅行でした。裏金から職員に旅費の一部補助を、理事には全額を支出したといいます。岡村・浜川市議は「保育料」として保護者から集めた金を使って研修旅行と称した韓国・温泉旅行や各種の宴会に参加していました。

しかし問題はこれだけにとどまりません。数々の疑惑があります。

@理事関係者の子どもを自由契約児として、極端に安い保育料で入園させていた疑惑です。その中には、両親とも公務員で、最高額と思われる保育料を、2〜3万円で、複数の子どもを、長期にわたり入園させていたという疑惑もあります。ある理事の関係者も自由契約児で入園してましたが、事件の発覚が確実視される中で、急きょ是正されています。

A延長保育、土曜出勤帳簿の改ざんによる補助金の詐取の疑惑です。

江の口保育園では、職員19名中8名が退職するという異常な事態となっています。「園は、出勤していない土曜日も出勤の扱いにしていた」との情報や、複数の保護者が、必要がないのに「園からたのまれ延長保育の申し込み書に判を押した」と語っています。架空の請求で、補助金を詐取していた疑惑があります。

この疑惑を徹底解明することは、まじめに努力している民間保育園の信頼を回復し、正当な補助制度を守ることでもあります。

B保護者からの朝食代のピンはねの疑惑もあります。同園では、朝食代と称して保護者からパン代を集めていました。しかし、関係者の話では、実際は措置費(主食分は含まれてない)の中でやりくりしていたとのことです。給食内容の低下と保護者の愛情を利用して集めたお金を横領していた疑惑です。

 これらの問題は、他園の「自由契約児」の問題とは、内容の点でも金額の大きさでも、また市議が関わっていた点でも同列に扱えない重大な問題です。

子どもに責任はない 市は保護者などの不安解消に全力を

「保育園がどうなるのか」「存続できるのか」など、保護者や職員は、今、大きな不安の中にいます。今回の事件は、法人の経営陣の問題であり、子どもと一般の保護者には責任はありません。市は、まず園の存続、健全化の決意を明らかにし、関係者の不安の一掃をすべきです。そうしてこそ、関係者が真実を語りやすくなり、事態を徹底究明する力ともなると考えます。

理事である市議の責任は重大 議員の資格なし

8日の市議会の「弁明」で公明・岡村市議は、無料で海外旅行に参加していたことを認めましたが、「軽率だった」「関知していなかった」「残念」「一応精算して現在返還させていただいている」と他人事のような言い訳をしています。法人設立の昭和63年から15年間連続して理事を務める唯一の人物として長期にわたって園の経営にかかわってきました。関係者は「実質的な中心」と語っています。

浜川市議は、平成12年4月から理事に就任したといわれていますが、「知らなかった」と述べ、旅行や宴会費用を園に返還したといいます。保護者から集めた「保育料」を不正に使用していたことは極めて悪質で、返還すれば済むような性格の問題ではありません。

また、両市議は現場に責任があるかのような発言をしていますが、12日の市議会厚生常任委員会では「園長は理事会に報告していた」と述べていることが明らかにされ、市執行部も「理事会は(自契児や裏会計の存在を)知っていたと想像できる。そういう実態があった」との見解をしめしています。浜川市議が「弁明」の中で述べた「何年度か定かでないが、決算の認定終了後に自由契約の話があった」という話とも整合性があります。実際、昨年度の園長は、一昨年から同園に就職した人物であり、長期にわたる不正の責任を押しつけることは不可能です。

 2名の市議は議会を代表する議長の経験者であり、また、市民の信頼にもとることのないように努める」と規定した「高知市議会議員の政治倫理に関する条例」を提案した特別委員会の委員長(浜川)、委員(岡村)も努めており、特に高い政治倫理が問われるのは当然です。
 理事は「すべて社会福祉法人の業務について、社会福祉法人を代表する」(社会福祉法第三八条)存在であり、その責任は重く、両議員は真相を明らかにし、市民の信頼を裏切った責任をとって辞職すべきです。

黙認?情報漏えい 高知市にも究明すべき問題が

一方、法人を監査する立場の高知市は「知らなかった」「被害者」という立場をとっていますが、高知市にも究明すべき問題があります。市は、平成12年度に監査を実施しており、海外旅行等に問題があることを早くから察知していた形跡が見られます。
 また、4月には江の口保育園運営協会に関係する情報の開示請求をした市民オンブズマン高知のメンバーの名前が、高知市から園側に漏れていたという行政の情報漏えい事件が発生しました。「証拠隠滅を促すようだ」との批判の声があがっています。

さらに、理事の親族が自由契約児として安い保育料で入所したという疑惑の調査については、市は「回答しかねる」と消極的な姿勢をとっています。有力市議が同園の理事であるだけに、高知市がきちんと調査・対応したのかを明らかにしなければなりません。 

 【公明党・岡村市議 情報漏洩は「オンブズマンの自作自演」と暴言】 

 5月7日の市議会総務委員会では、この情報漏えい問題について、原因究明や再発防止を求め、議論になりましたが、この議論の途中(休憩中)に、岡村市議は、「オンブズマンの自作自演かもしれん」とオンブズマン側がありもしないことをねつ造したかのように暴言をはきました。
 情報漏洩の事実については高知市側も認め、5月3日に市民オンブズマン高知に「不適切な行為ではなはだ遺憾な対応。深くおわび申し上げます」と謝罪する文書を提出しています。
 市民の声を敵視するかのような発言は、許せるものではありません。

徹底究明なしに市民と力を合わせた財政再建は不可能

 高知市は、未曾有の財政危機に瀕しており、市民と力をあわせ財政再建に取り組む重要な時期にあります。今回の事件は、福祉の現場で、市民と行政、市民と議会の信頼関係を大きく傷つけました。事件を徹底究明し、膿を出し切り、市民の信頼を回復すること。それなしには、ただでさえ厳しい財政再建の道は、さらに遠のくばかりです。市も議会も、そういう位置付けでとりくむ必要があります。
 また今回の事件は、保育園などの民間委託の危うさの一面を示したものであり、この点でも大きな課題を残しています。