2004年4月11日



党利党略と利害が交錯 新旅費システム予算削減の背景 

 3月18日に閉会した2月県議会で自民・県民クラブ・公明などは当初予算案から、県職員の旅費事務を刷新する旅費システム構築の関連予算(約3200万円)を削除しました(日本共産党と緑心会は反対)。執行部をチェックする議会が予算を修正することはありうることですが、今回の「修正」の背景には反橋本色を強める党派の政治的思惑や業者との関係が見え隠れし、チェックといえるようなものではありませんでした。

■旅費の現状

 ここで言う「旅費」とは知事部局(病院局、企業局は除く)、県教育委員会(県内業者に影響の大きい修学旅行は除外)、県警本部職員の出張や研修時の交通費、宿泊費、日当などのこと。年間の件数は約20万件、旅費総額は約17億円になります。
 県庁でカラ出張が大問題になった後、旅費計算が複雑化して職員が宿泊先の確保、チケットの手配などに追われ本来の仕事に集中できないような実態を改善し、旅費の透明性を高めるため、旅行業のノウハウを持つ外部業者に委託して効率化、経費削減を図ろうというもので、効果は3億円に相当します。県は平成11年から準備をすすめてきました。
 
■プロポーザル方式

 委託業者を選定するにあたってはプロポーザルという手法がとられました。システム構築の段階からプランを業者に出させ、正確性、利便性、コスト、地元経済への波及など総合的に数値化して、高得点の業者を選定するもの。県庁外部4人、県庁内3人の委員が審査にあたりました。
 応募したのは日本旅行(高知新聞社系企業と提携)、東急観光、近畿日本ツーリスト、JTB(高知県庁生協と提携)、名鉄観光の5社。最後まであらそったのが近ツとJTBでしたが、僅差で近ツが受注することになりました。
 近ツが高得点を獲得した理由として、吉村大・県業務改革推進室主任企画員は「オンサイトデスクに専門チーム10人を置いて、情報システムだけでなく人間力もあわせ、車による出張が8割を占めて非常に計算が複雑な高知県の実状にマッチしたプランが評価されたと思う。コストも軽減されており、地元から10人以上雇用するのもパンチが効いていた」。

■経過を無視

 新システム構築のための関連予算は平成11年度から計上されており、問題なく承認されていました。当然、今回予算を削除した党派もこれまで関連予算に賛成してきた経過があります。執行部は議会の承認を経て所定の手続きにのっとり業者を選定したにすぎず瑕疵はありません。
 にもかかわらず自民・県民クラブ・公明などは橋本県政への言いがかり、業者との関係などの思惑が交錯した結果、最終段階で予算を認めないという挙に出ました。党利党略、県民不在の「修正」としかいいようがありません。
 自民、県民クラブらの主張は、@「17億円を県外業者に持っていかれると県内業者に打撃が大きい」、A県の姿勢に旅行業者が意欲をなくし観光振興に支障をきたす、という2点に集約できます。
 旅費総額17億円の内訳は、航空会社やJRに支払う交通費、ホテルの宿泊代、職員に支給される日当などが大半。車による(公用車、私用車)出張が全体の件数の8割を占めることもあり、もともと大部分が県内業者とは別の所に流れている金。航空券の取扱手数料も「航空券を扱っても大手にマージンを抜かれて旨味はない。県内業者にとっては団体旅行が勝負」(元旅行代理店社員)というように県内業者への影響は限定的なものです。
 観光客の誘致への影響については、「JTBが不快感をあらわしている。新システムは安いかもしれないが、(JTBが)高知に観光客を送り込むのをやめるとなったらマイナスになる」(西森潮三議員・自民)などという的はずれな議論しか聞こえてきません。
 宙に浮いた形になった「新旅費システム」ですが県業務改革推進室では「予算が削除されたことにより近ツとの間で県がペナルティを科せられるようなことは現状ではありません。これまでプロポーザルで選定した経過やその成果を議会や県民に知らせる努力が足りなかったという反省点はありますので積極的に知らせて行きたい。近ツも見直すべきところがあれば相談に乗ると言っています。議会にも理解していただけるものと考えています」と話しています。

■我田引水?

 新システムにより影響があるのは、現在県庁本庁舎地下に店舗を構える高知県庁生協と、県外中堅業者の東武トラベルが扱う航空券の手配。両社で航空機を使う出張の約6割の航空券を扱っています(比率は五分五分、県業務改革推進室が60職場、1100人から集めたアンケートによる)。
 今回「修正」の提案理由の説明に立つなど急先鋒をつとめた坂本茂雄議員(県民クラブ)は、県職員労働組合の組織内候補ですが、県職労と県庁生協は幹部役員が重なるなど密接な関係にあり、坂本議員と県庁生協は利害が完全に一致する存在です。「県庁生協と提携したJTBが選に漏れたのでクレームをつけている」ようにみえかねない言動には議員のありかたとして疑問が残ります。