高知県知事選挙にあたっての日本共産党の立場
2003年11月11日 日本共産党高知県委員会
はじめに
目前の知事選(11月13日告示、30日投票)は、4期目をめざす橋本大二郎知事と、自民党執行部・県議団に推されて出馬した松尾徹人前高知市長が立候補の決意を表明した。今度の県知事選挙で問われているのは、県民に開かれた県政の改革を前進させるのか、自民党執行部・県議団と利権集団が結びついた古い県政の復活を許すのかにある。
日本共産党高知県委員会は、この間、わが党が与党ではない自治体で、地方目治の本旨を、部分的だが、重要な点で守ろうとする新しい流れが生まれていることに注目し、この「希望ある流れ」を前進させる立場から、広く共同をすすめてきた。今回の知事選挙にあたっても、この見地に立って、県民の暮らしと地方自治を守るための態度決定をおこなうものである。
(1)橋本県政とこの間の日本共産党の対応について
【前回知事選とその後の党の対応】
前回の知事選挙では、自民党執行部・県議団は、橋本知事の非核港湾条例の提案などをとりあげ、「基本的スタンスが違う」として所谷孝夫氏(県農協中央会会長=当時)を擁立し、橋本県政つぶしの行動に出た。わが党は、過去2回の県知事選挙では、候補者を立ててたたかってきたが、橋本県政が、自民党県政時代と違って、共産党排除がなくなり、建設的な議論が可能になったこと、特に、2期目以降――地方自治の立場からの発言、非核港湾条例の提案、コメの減反おしつけ反対、情報公開条例や子どもを主役とする教育改革など県民に聞かれた県政への改革などを行ってきたことを評価し、自民党県政の復活を許さない立場から、候補者を立てないという新しい対応を行い、「橋本県政の継続・前進」という立場を明かにした。その後、党県議団は、当初予算案への対応でも、同和行政の清算に踏み出したことを評価して、初めて賛成した。このように、日本共産党は、全体として前向きの「是々非々」対応を行ってきた。
【県民参加の県政へこの4年間の前進面】
第1は、自民党時代の負の遺産の一掃など県政改革が前進したことである。「県政の最大のガン」と言われたゆがんだ同和行政が、やみ融資問題の究明を契機に、橋本知事がこれまでの同和行政を反省し、同和行政の終了にすすんだことである。体育協会人事の改革、「圧力排除要領」の制定など特定団体、人物の影響刀を排除し、利権とのゆ着を断つ県政を進めてきた。さらに、知事が自民党と一線を画した態度を貫いたことで、議会で正常な議論が活発に行われるように変化し、議会のチェック機能も働き始めたことである。
第2は、国に対して、地方自治の立場からの積極的発言を行ってきたことである。国民体育大会の簡素化、道路整備の「1・5車線」化などを全国に発信するとともに、小泉「改革」や「三位一体の改革」「健保3割負担」への異議や疑問、教育基本法「改正」に同意しない発言をしてきた。有事法制やイラク攻撃に異議と反対を発信してきた。農産物のセーフガードの「速やかな発動」発言など、国や地方のあり方に対し二期目より踏み込んだ発言を数多く行ってきた。
第3は、福祉・教育、産業政策などの分野で、長引く不況や地方自治の切り捨てという困難な条件の中でも、県民参加を基本に、少なくない前進を築いてきた。乳幼児医療費の無料化は、わが党と県民の運動を背景に就学前の入院を対象にする制度が実現した。教育行政の民主化の点でも大きな変化があった。また、小学校の年度途中のクラス変えを教員を加配する方針に踏み出した。産業・地域活性化の分野では、[地産地消」の取り組み、間伐の促進や中山間地支援の充実、不況に苦しむ業者対策としての借換え融資制度の新設などを行ってきた。
【問題点の特徴―― 改革途上の弱点としての現れ】
橋本知事とは、PFI事業や教職員の成績率の導入など「民間手法の活用」でわが党とはスタンスの違いがある。住氏の要望を背景にしているとは言え、自衛隊誘致は評価できない面である。また、障害者医療費助成の後退、原因や責任もあいまいなままの競馬への税金投入など不況と地方財政の危機を背景にしたとは言え、日本共産党は、県民の暮らしを守る立場から厳しく問題点について論戦を行ってきた。
また、この間の県政の否定面で特徴的なことは、やみ融資、裏金問題、産廃施設の迷走、県立大学長選問題など不祥事、事件が相次いだことである。それらは、第一に、自民党や「解同」などの影響力のもとに築かれた県政改革に抵抗する古い体質に起因すること、第二に「改革」を急ぐあまりの踏み込みすぎるという姿勢に関わる問題である。これらは改革途上の弱点と言え、この克服に対する日本共産党の役割がいよいよ重要になっていると言える。
(2)県知事選挙――県政奪取を狙う利権集団とのたたかい
【利権集団が、古い県政の復活めざし、橋本知事おろしの陰謀】
9月県議会で、自民党県議団は、12年前の選挙戦の「資金疑惑」なるものを持ち出し、「橋本知事おろし」を画策した。「資金疑惑」なるものは、物証もなく、内容に矛盾を含む笠氏の証言を唯一の「根拠」としたものであり、その出発点は、特定業者とそれに加担した自民党県議の不当な要求を橋本知事が毅然として拒否したことにある。また、橋本知事は、笠氏が「天の声」の存在となる危険を感じ排除してきたことも明かになっており、今回の「橋本知事おろし」は、その笠氏の私憤と利権集団の県政奪取という暗い陰謀が結びついたことが強く示唆されるものである。今後、県政の改革をすすめるために、浮彫りになってきた自民党執行部・県議団、利権集団と県政の一部に残る根深いゆ着構造や談合疑惑を徹底して究明し一掃する必要がある。
自民党県議団は、松尾前高知市長の出馬に早くから動いてきた。今回の橋本知事攻撃は、松尾出馬の条件を整えるために仕組まれたものである。松尾前市長は、圧力に弱く、大型事業とゆがんだ同和行政に固執して空前の財政危機を生み出してきた上に、今回、自民党県議団の陰謀に加担し、市長選からたった1年で、議会にも、市幹部に相談することなく市政を投げ出した。松尾氏に県政を担う資格はない。
【「改革路線」推進は、県民に対する日本共産党の責務】
県知事選挙では、古い利権構造や同和行政のゆがみの復活を許さず、県政改革を前進させることの重要さがますます明かになっている。きびしい財政や行政制度の急激な変化のもとで県民の暮らしを守るためには、県民の知恵と力を生かし、ともに前進する県政へと、改革を徹底することが、ますます大切となっている。橋本知事が発表した公約案は、「徹底して県民に向き合う県庁に変えていく」ことを最大の課題とし、全体として、県民要求に積極的に応えようとする姿勢が示した大胆な改革方針になっている。日本共産党は、引き続き、前向きの「是々非々」の立場を堅持して、橋本県政に対応していく。
この選挙で、日本共産党は、県民の利益を守るため、橋本県政のもとでの「改革の前進」を望むという立場を広く県民に訴える。そして、国政でも、地力政治でも、住民との共同を広げ、暮らしと平和を守るため引き続き全力で取り組む決意である。小泉内閣による地方自治の破壊に対して、「自治体らしい自治体」を築く流れを前進させることは全国的意義を持つたたかいでもある。