2003年10月24日 高知民報



松尾徹人氏の無責任な市長辞職について
      
                       2003年10月9日 日本共産党高知市議会議員団


 昨年秋の市長選で3選を果したばかりの松尾高知市長が、突如、知事選への出馬を表明し、市長を辞任した。日本共産党高知市議団は、この行動が、市民に対するあきれるばかりの無責任さを示すものとして批判するものである。

 公約、市議会、職員との信頼ふみにじる

 松尾氏の出馬表明は、9月定例市議会の終了直後の10月11日に行われた。市民の代表者で構成される市議会にはなんら意思を表明せず、その意思を問う質問にも、玉虫色の答弁に終始していた。ところが議会終了直後、市三役や庁議メンバーに報告することなく、一部の支援団体に出馬決意のあいさつに走った。市幹部、市議会も報道で「出馬決意」を知る極めて異常な事態となった。
 松尾氏の行動は、市民や市議会、市職員との信頼を足蹴にし、昨年の市長選で約束した公約をわずか1年で放棄したものである。市政を投げ出す無責任な行為であり、松尾氏が政治家としての最低限のルールも守れない人物であることを示した。
 松尾氏は出馬を固めた経緯を「5月頃から、多くの県民の要請を受けていた。それが10月になって急激に高まった」と語っているが、自民党が県議会で「橋本知事の4選阻止」を目的に根拠のない質問をしかけながら、松尾市長に出馬要請していたことが明らかになっている。自民党県政復活をねらう自民党らの策動に乗って市民との公約を踏みにじったものである。 

 自ら生み出した財政危機で市政を投げだす 
 
 松尾氏には、深刻な財政危機を招いた市政を、破綻させないよう運営していく責任があった。9月市議会で松尾市長は「借金返済の山がこれから押し寄せてくる」「大変不安な状況」と危惧を示し、「財政が破綻することがないよう慎重に検討していく」と答弁したばかりである。今回の知事選にむけた動きは、自らが生み出した財政危機を前に、市政運営にゆきづまり、市政を投げたものでしかない。

 高知市政の財政危機

 松尾市政の3期9年間、大型プロジェクト事業は、新清掃工場320億円、競輪場207億円、カルポート190億円、東部プール71億円、新清掃工場の余熱利用施設「ヨネッツ」に19億円、合計807億円と拡大した。大型施設のランニングコストだけで約10億円となっている。これらの施設は、計画が途中で野放図に拡大していったことが特徴である。しかも建設の受注は県外大手であり、地元企業は潤っていないことも指摘しておく。 
 借金のスピードは、市民の命と財産を守る防災都市の建設をすすめた横山市政の後半と比べ5倍にもなっている。その結果、高知市は14年度末には約3500億円の借金を抱え、毎年250〜280億円も返済しなくてはならない大変な財政状況となっている。借金比率は、全国の同規模の都市に比べ3倍。「借金を返せる体力指数(純債務返済年数)」で全国ワースト9位、県内9市でも最低(全国695都市中。「全国財政破綻度ランキング 週刊ダイヤモンド 本年8月23日号」)という惨状である。      市の財政構造改革の第2次方針(01〜03年)は、2年目には見直しが迫られ、昨年11月に第3次方針が発表された。施設建設計画の見直しにも初めて踏み出し、子ども科学館、健康あんしんセンターなど松尾氏が公約した大半の施設を「調整中」と事実上凍結することになった。今年に入ってからも再開発事業の2年延長など既に第3次の新方針も狂い始めている。 
 これだけ財政破綻をうみながら、「あったほうがよい」程度の理由で、土佐橋の高架遊歩道を25億円かけてすすめているのが松尾市政である。
 一方で国保料引き下げ、介護保険料の値上げストップや市単独でホームヘルパーなどの利用料3%のすえおき、30人学級など、市民の切実な要望は後回しにされた。
 危機的な財政状況をつくりだしながら、市政を投げ出すような無責任な人物が市政運営から離れるのは、市民にとっては望ましいことではあるが、松尾氏が県政をめざそうとしている今、改めてその政治姿勢にも言及しておく必要がある。
 
 特定勢力と結びつき、行政をゆがめる 

 松尾氏は各種のイベントには必ず出席するフットワークの軽さを持っているが、圧力に弱く、筋を通せない軽さは政治家としての致命的といえる弱点である。
◆「特定団体」の圧力に屈し、同和行政のゆがみに固執 県政は闇融資事件の反省から、部落解放同盟の横暴など同和行政のゆがみにメスを入れ、全国で初めて同和行政終了に踏み切った。県下の市町村でも、同和行政のゆがみが正されつつあるが、高知市はいまだに「同和問題は人権問題の柱」として、県下9市のうち唯一同和対策課を残して、施設管理などに「解同」系事業体と随意契約を行うなど特別対策を続けている。「解同」に同調して「落書き事件」への異常な対応も続いている。教科書無償運動の歴史を偽るビデオも作成した。松尾氏が県知事選出馬の決意を、まっさきに伝えたのが「解同」高知市協であったと言われていることも、そのことを象徴的に示している。
 闇融資の原型といわれた昭和62年に土佐闘犬センターへの融資が新設された時、財政課を総括する立場の県総務部長が松尾氏であったことも指摘しておく。
◆「特定市民」の介入を生み出す 松尾市政は、理不尽な事でも声の大きな者に毅然として対処ができず「特定市民」の不当な介入を生みだしてきた。市議会でも大問題となり、市職員の中では、「言葉尻を捕らえられないようびくびくしながら仕事している」という不正常な環境をつくりだされてもいた。
◆市民合意を軽視する弱点が噴出 「誉めてもらえるところには行くが、批判されるところにはいかない」。これが松尾氏を評する特徴的な声の一つである。そのことが、市民合意の軽視として各種の問題を生み出してきた。
 三里エコ団地や上町の竜馬関連施設建設で、住民の反発を生み出し、昨年3月市議会では、松尾氏は「市民との信頼関係の再構築」を打ち出さざるを得なかったが、直後に中学校給食について関係者の合意を無視して突然導入を強行するなど、体質は何も変わっていないことを示した。
 
 松尾氏の政治姿勢 国にひたすら追随
 
 松尾氏は、官僚出身の首長の中でも異常なほど国に追随している。
 医療費負担増「すみやかな成立をもとめる」ーー。昨年、衆議院厚生労働委員会での意見陳述で、松尾市長は「健康保険が国保と同じ負担割合の3割になることは、評価できる。すみやかな成立をもとめる」と発言した。松尾氏には、市民の厳しい暮らしに心をよせ、国に「言うべきことを言う」という姿勢はない。
 「住基ネットは安全」ーー。各地で大きな問題になった住基ネットについても「安全」と総務省の主張を繰り返し「積極的に参加する」と発言している。 

 松尾氏に県政を担う資格はない

 松尾氏は、記者会見で「私の目指す知事像の裏返しが、今の知事の政治手法や政治姿勢だ」と語っているが、的を射た言葉である。個々の政策評価はあっても、特定勢力に屈しないのか、屈するのか、国に言うべきことを言うのか、追随か――。氏自ら認めているように政治家としての基本姿勢の違いは明白である。
 さらに松尾氏は「多選のよどみを選ぶか、さわやかな新しい風を選ぶか」と知事選の選択肢を示したが、求められているのは単に新しいかどうかではなく、古いしがらみや特定勢力の圧力を断ち切り、県民に開かれた県政をつくる改革姿勢である。
 自民党にかつがれ、「解同」に屈し、自ら招いた財政危機による市政運営のゆきづまりを投げ出した松尾氏が、県民の期待に応えるとはとても判断できない。