2003年11月16日 高知民報



学校は誰のもの? 大方商業商業科を廃止 丸の内音楽科は存続


      音楽科存続が決まった高知丸の内高校

 単位制導入を生徒・保護者・地域の声に耳を貸さず強引に推進しようとする県教育委員会の「高校再編」計画に、県民の批判が高まっていましたが、同委は11月5日、臨時委員会を開き、高知丸の内高の男女共学と単位制導入・音楽科存続、大方商高・中芸高の昼夜開講単位制導入、須崎高校久礼分校の募集停止などを2005年度から実施することを決定しました。

 確定した再編計画は、当初案のうち丸の内高校音楽科の廃止を存続へと修正し、単位制高校と併設することにしたものの、他はすべて原案通り。計画が知らされてからわずか3カ月あまり。生徒・保護者・地域にとって極めて重大な問題が強引に押しきら切られたことで、県民の県教育行政への不信感が残る結果となりました。

 ■上意下達

 「幡多地域に商業科を残してほしい」と強く要望していた大方商業高校のPTA関係者は、商業科廃止の決定を知り、「高知の教育が良くならない理由がよく分かった。県教委は話を聞くポーズだけで、聞く耳は持っていなかった。学校は一体誰のものなのか」と感想を漏らしました。
 保護者や生徒に再編計画案が知らされたのは7月のこと。夏休みを挟んだ11月上旬には早くも結論を出すという異様な性急さでした。PTA関係者には数回説明会をしただけで、幅広い声を集約して学校の将来像への合意を形成していく時間が、まったく足りなかったことは明らかです。
 土佐の教育改革が掲げる「参加と共同」という言葉とは裏腹に、従来型の行政主導、上意下達になってしまった感は否めません。「高校再編」で最も大切なのは、「どんな学校をめざすのか」という学校や地域の合意にほかなりません。合意が全くないまま上からの計画が押しつけられる学校の一方で、学校内外で積み重ねてきた議論の延長線上の案が出され、受け入れられている高知北高校のような例もあります。
 県教委は、「土佐の教育改革」の初心にかえり、生徒・保護者・地域の声を教育行政に生かす姿勢に立つことが強く求められています。

 谷内康浩・県高教組書記長の話 丸の内高校音楽科を県民世論の高まりを背景に存続させたことは評価できますし、委員会審議を県民に開かれたものにするため、開催時間を考慮したり、傍聴者を受け入れるため会場を変更したりの努力は貴重でした。それだけに行政が先に決めた結論を押しつける結果になってしまったことは残念です。「高校再編」はこれで終わりではなく、平成25年までに8校減らす計画などがあり、高校入試も大きく変えようとしています。県教委が強引な手法を再び繰り返すようだと、県民の不信感は決定的になってしまいます。「学校はみんなで作るもの」という精神で、信頼回復にむけた取り組みをしてほしい。

 ※決定した「高校再編計画」
 
中芸 昼夜開講の多部制単位制高校 
高知丸の内 男女共学化・全日制単位制。家政科廃止。音楽科併設
高知北 昼間部・夜間部・通信制の課程の見直し
高知園芸 農業系列を中心にした総合学科
久礼分校 募集停止
大方商業 通信制を併置した昼夜開講の多部制単位制高校