2003年6月29日 高知民報


県教委が家父長制のススメ?


 「妻が夫を『主人』として尊敬している家庭は子どもが良く育つ」を基調にした講演会「親が変われば子どもが変わる」が7月20日、高知市で開かれます。夫=「主人」というこの講演、時代錯誤の右派団体の集会ではありません。県教育委員会と全市町村教委が後援する行事ですから驚きです。教育委員会は国民的課題の男女共同参画社会実現に冷水をかける行事後援は取り消すべきです。

 北村弥枝氏は、女性教育総合研究所、世界新教育研究会、教育研究会未来などの組織名を使いながら、男尊女卑と家父長制復活を切望する講演をして全国をまわってきました。著書には「幸せですか?家庭における“心の教育”を問い直す(星雲社発行)」。
 北村氏の持論は、「身ごもっている時の母親の思いが胎児にインプットされるので、妊娠中に妻が夫を『主人』として尊ぶことにより、お父さんが家の中心であり、その後の人生でも組織の中心になる人を尊んで生きるんだと教える」ことに尽きます。
 
■「心の教育」

 一方で夫を「主人」として尊ばず「行き過ぎた男女平等」、「唯物論的な考え(北村氏は唯物論=拝金主義と断定している)」、で育てられた家の子どもは、いじめられ、不登校になり、「妻が夫と対等と思っている」と(子は)よくてフリーターくらいの人生で終わるなどという断定が著書には多く見られます。
 今日の社会と教育のゆがみから発生している困難な状況の原因を「妻の心」に押しつけ、「心がけが悪い」と責め立てるのが「心の教育」の正体です。
 北村氏の講演は全国的な規模に及び、他県でも都道府県・市町村教委が後援しています。影響は軽視できません。教育基本法を「改正」し、歴史教科書で侵略戦争を美化して「愛国心」を強要する流れと軌を一にするものです。
 北村氏は「天皇陛下即位10年をお祝いする国民祭典」(同奉祝委員会主催、総理府ほか後援)で奉祝委員を務めていますが、家庭では「主人」に仕え、会社に出たら社長に仕え、国家では天皇に忠誠を尽くす「忠君愛国」的思想が一貫しています。

■矛盾

 高知県庁には男女共同参画・NPO課というセクションを設置して「男女共同参画プラン」という指針をさだめ真の男女平等にむけた取り組みをすすめています。学校現場でも脱ジェンダーにむけた努力が始まっていますが、この取り組みに冷水を浴びせる「男尊女卑のすすめ」は県の方針とは明らかに矛盾しています。
 県教委や高知市教委がことのほか熱心な「人権教育」からみても北村氏の主張は容認できるものでないことは明らかです。県教委と各市町村教委は北村氏の発言内容をよく吟味し、後援を早急にとりけすべきでしょう。