2003年7月20日 高知民報



自民党提出「県職員の職務倫理確立と県政執行体制の刷新を求める決議」への田頭文吾郎議員の反対討論

 国政の場で加藤元議員や鈴木宗男議員が起こした事件に代表されるように政治家や特定団体・個人の働きかけ、口利きにより行政が屈服させられ、利権・腐敗・汚職事件が枚挙のいとまのないように引き起こされてきた。地方自治体においても同様の事件が相次ぎ、不当な圧力を排除するとともに意志決定過程を含め、県民に開かれた県政、県民に責任の持てる県政を作るためにこの種の取り組みが全国の自治体で取り組まれている。

 本県においても一連のヤミ融資事件等に象徴されたように、特定の団体や個人の不当な圧力や働きかけにより、いかに県政がゆがめられてきたのか誰もが認めるところであり、県当局の責任と同時に議会の責任も認め、対処してきたところである。

 今回作成した要領案は、県当局がヤミ融資を受け、平成13年9月に県政改革に向けた決意表明を行い、外部からの働きかけにどう対応するのか議論を重ねてきた中で、県に対する不当な圧力といった問題とは別に、県の組織内の報告・連絡・相談などが徹底されていなかったり,意思形成過程の情報公開が不十分だったことなど、すすめ方や意識そのものに問題があったのではないかという反省が出たことから策定し、県が要望や提案など働きかけを受けた場合は記録に残して報告し、情報を共有することで組織としての適切な対応をするよう徹底し、建設的なものから不当なものまでどのような働きかけを受け、どうに対応したのかを県民に公表することにより説明責任を果たし、開かれた県政を推進するために定めたものと説明している。

 過去の不祥事の反省に立ち、職員が論議を重ね、開かれた県政と県民に信頼される県政を作るための方向として策定されたものであり、我々はこの要領について賛成する立場を明らかにする。

 不当な要求や圧力にも屈しない県職員の意識を確立することが必要であることはいうまでもないが、問題は不当な圧力をいかに抑制するか、そのようなことが出来ない環境をどう作っていくのかが、県政に係わるものに課せられている責務。

 決議案は「このような要領を策定せざる得ない状況を引き起こした職員に対する意識改革の確立」、「倫理観の徹底」、「職員資質向上への努力の欠如、すなわち行政の基本的責務をなおざりにしてきた過去を謙虚に反省し」などと述べている。

 容認できない最大の問題点は、県政上の不祥事の要因の責任を県職員の執行体制のみに一方的に転嫁するとともに、大きな要因である不当な働きかけ等に代表される行為をさせないための施策、議会の責任に一切触れていない点。
 意思表明をするなら議会も当然、不当な働きかけや口利き、圧力をかけないし、県民にもかけないよう呼びかけるべきだ。施行する上で疑問や問題点があれば、このような決議をするより委員長報告で指摘すればよいことであり、ことさら的はずれな決議をする真意がまったく理解できない。議会の見識を問われる。

 第二の問題点は、決議案が「一日も早くこうした要領が必要としない人事管理体制の確立」としていること。要領の説明では県に対する不当な圧力とは別に、県民の要望や政策提言に県が責任を持って対処するためにも必要と述べている。そのためにも県民が今まで以上に様々な意見や要求が出来るような環境、県民の声に誠実に対応できるようにすることが大前提となる。政治家は県民から選ばれた代表として県民のためになると判断すれば積極的に働きかけ、政策提言をする責任がある。県民や各種団体も積極的に要望や提言をすべき。

 地方自治の本旨とは住民による住民のための政治であり、地方自治の発展を妨げてきた政治家や特定の団体、個人の不当な働きかけを排除し、開かれた地方自治の新しいあり方として、不十分なところは県民との対話で改善しつつ、全国の自治体で実施されることになるだろう。