2003年5月25日 高知民報


検証 高知の地上波デジタル放送 ローカル民放経営に重圧

高知市五台山の高知放送とNHK高知の親局

 2003年から地上波テレビ放送がデジタル化され関東、近畿、中京の大都市圏でスタートします。高知県も2006年からデジタル放送が開始されることになっています。高知県内の放送局の地上派デジタル放送への対応、問題点を調べてみました。

 地上波放送とは、県民の日常生活とかかわりの深い基幹放送のことで、高知県ではNHK総合・教育、高知放送、テレビ高知、さんさんテレビのことです。
 デジタル化のスケジュールについて小笠原一清・RKC高知放送常務取締役は「2006年秋にNHK、民放3局が足並みをそろえスタートするため懸命に準備をすすめている。この段階でデジタル放送が見られるのは全世帯の6割ほどだが、2011年までにすべての世帯で視聴できるよう設備を整える。同年までは従来のアナログ放送も併行(サイマル放送)する」と話します。
  
■設備投資が経営圧迫

 経営基盤が弱く難視聴地域を多くかかえる地方の放送局にとって、巨額の投資をしてデジタル放送に対応するための設備への投資は、経営に深刻なダメージをもたらします。デジタル用の設備はアナログ用とはまったく別物のため、変更には設備をごっそりと変えなければならず、巨額の費用が必要になるからです。
 2006年にデジタル化されるのは親局(高知放送とNHKは五台山、テレビ高知とさんさんテレビは烏帽子山にある)と呼ばれる設備ですが、費用は高知放送だけで約30億円。さらに高知放送には(他局も同様)、電波を中継するサテライト局が県下に85局もあり、「総額は50〜60億円程度。親局の次は中村や安芸など拠点になる局を整備し、順次過疎地をカバーしていく。とにかく2011年にテレビが映らないことがないようni必死でやっている(小笠原常務)」。
 行政からの補助や、NHKと民放3局が鉄塔を共同で使うなどして(これまでは各社バラバラ)コスト削減につとめるとはいえ、不況による広告収入の激減の中での負担はきびしく、放送局まかせでは、結果的に過疎地が切り捨てられてしまう不安はぬぐえません。

■「やるしかない」

 ある局の幹部は「デジタル放送をやりたい局などあるはずがない。しかし、放送は免許事業であり国が決めればやるしかない。従わなければ免許がとりあげられる。今でも利益を出すのに四苦八苦している。できるだけコストを減らしてやるしかない」と本音を漏らします。
 もともと2011年にアナログ放送を停止するという法律自体に無理があり(国会では日本共産党だけが反対)、そのしわ寄せをローカル民放局と視聴者がモロにかぶっています。
 県民生活にとって重要な問題であり、期限もすぐそこまで迫っているにもかかわらず、県行政の関心は高いとはいえず(市町村のほうが高い)、県民には情報がほとんど出されていません。
 現在、市販されているテレビやビデオ、DVDレコーダーなどがデジタル放送に対応していないことなどもほとんど知らされておらず、消費者保護の観点から言っても大きな問題があります。
 ケーブルテレビの活用なども含め、受信が困難な過疎地にもきちんと対応できて安心できる計画をすすめていくことが急がれます。
 ※大都市圏で行われている混信対策のための「アナアナ変換」は混信の恐れが少ないため高知県では今のところやる予定はありません。