2009年11月8日

コラム南炎「コンクリートは命の道へ」と言うのなら

民主党新政権のスローガン「コンクリートから人へ」。現政権がこの言葉通りに向かっていのかどうかの評価はまだ定まらないが、無駄な公共事業から家計支援へと政策軸を移すというスローガンの方向性自体は的を射ている▼最近このスローガンに対比させて尾崎正直・高知県知事が盛んに言っているのが「コンクリートから人へに賛成。コンクリートは人の命へ。政治主導で集中すべきだ。これが政治主導の試金石」。すでにインフラが整備されているところに重複投資するのではなく、高知県のように遅れている地域に重点化して投資すべきというのが、言わんとするところであり、高知県の知事としては当然だろう▼しかし知事の発言は高速道路ネットワークの「ミッシングリンク」解消、「四国8の字ネットワーク」の早期完成を念頭においている。「8の字ネット」を急ぐからには、高知ICから高知空港までの15キロメートル、「高知南国道路」の整備も含まれるわけだが、この道路は1980年代に決定され総工費約1300億円の巨費を投じる計画で、高知ICから高知南IC(仮称)の区間は、まるで未来都市のような二階建。下を走る四車線県道に文字通り「屋上屋」を重ねるバブルの遺物だ。その高コスト故に、「一時凍結」されたことは記憶に新しい▼高知県はインフラ整備が遅れた地域であるから、実施される事業はすべて命にかかわり、無駄ではないという論法はいささか飛躍が過ぎる。迂回ルートのない県東部地域とは異なり、代替道路がいくらでもある「高知南国道路」は重複投資の典型だ。この重複を棚に上げたままでは、知事のせっかくの発言も色褪せてしまうのが残念だ。(ひ)(2009年11月8日 高知民報)