2009年10月18日

コラム南炎 「県立図書館合築の抱える矛盾」

県教育委員会は新県立図書館を平成25年度に着工するスケジュールを公表した。高知市民図書館との合築を有力な選択肢とし、最有力の移転場所の候補として追手前小学校跡地をあげている▼両図書館の合築案は、両図書館の現場から「県立と市民図書館の果たすべき役割は異なる。すべきではない」という否定的な意見が表明され、市民図書館長は公然と反対論を唱えているにもかかわらず、しぶとく再浮上してくる。いずれ避けられない図書館の建て替えコストを少しでも下げたい県市の本音とともに、強引に立ち退かせた小学校跡地が「空き地」のままでは一大事。早く箱物で埋めたいが、市単独では無理なので県を引き込みたいという岡崎誠也・高知市長の思いが透けて見える▼だが、両図書館の合築には現場の反対だけにとどまらない重大な矛盾がある。高知市は「市財政は破綻寸前であり、とりわけこの5年間が危機的状態なので第二の夕張にならないため固定資産税増税とゴミ有料化をしたい」と5月から6月にかけて市内28カ所で市民に説明会を開いてきたが、連日その先頭にたってきた市財務部に「その舌の根の乾かぬうちに、次の箱物の話などできるはずがない。これまでの説明が嘘になる」という反発が存在している▼仮に合築した場合の地代負担についても双方には相当な食い違いがある。市側は「一括前払いか、分納か、賃借かで相当の地代を払ってもらうのは当然」、だが県教委側には「単価の高い地代は払えない」というような受け止めもある。このように合築案は幾重にも内部矛盾をはらんでおり、拙速に結論を出しては将来に禍根を残すことになることは明らか。こんな時だからこそ、腰を据えてじっくり考えたい。(ひ)(2009年10月18日 高知民報)