6月18日、国交省四国地方整備局は「凍結」していた「高知南国道路」をはじめとする道路建設を解凍し、事業を復活させることにするという。「凍結」とは中止ではないわけであるから、「解凍」を前提にした「猿芝居」だったことは誰の目にも明らかだ▼5月10日に高知市内のホテルで開かれた「凍結解除を求める道路整備促進県大会」には、当の国交省四国地方整備局の木村昌司局長が出席し、「凍結」に批判的な発言までしていた。この地方整備局が人選した「事業評価監視委員会」が、「事業継続は妥当」と結論付けるのは驚くにあたらないが、驚いたのはコスト削減のあまりの無内容さである▼「高知南国道路」の総事業費は1300億円。「高架橋やトンネルなど構造物が多く費用がかさむ」(国交省土佐国道事務所関係者)。高知ICから五台山南側に建設が予定される高知南ICまでの6・2キロメートル区間が、現行4車線の県道上に長大な橋をかけ、五台山の山腹に2本のトンネルをブチ抜くという途方もない計画だ。無駄を省くことを本気で考えるなら、この馬鹿げた「屋上屋」こそ見直すべきだが、出てきのは高知中央IC(高須に予定)などのわずかな形状変更による12億円。総事業費の1%にも満たない。1000円の買い物に換算すれば10円にもならないものを「コスト削減」とは言わない▼高知県民の「命」を真剣に考えるなら、はるかに緊急度が高いのがヘリコプター体制の充実だ。高知県の消防防災航空隊の奮闘は全国的にも突出しているが、いかんせんヘリの数が足りない。現場には、あれこれ制約の多いドクターヘリより、柔軟性の高い消防防災ヘリをもう一機導入すべきだという要望もあるが、県政の受け止めは冷淡で、「道路」のような熱意がまったく感じられないのはなぜなのか。(ひ)(2009年6月28日 高知民報) |