2008年9月14日

コラム「南炎」 吉川高知市教育長が急逝
吉川明男・高知市教育長が9月3日未明、自宅で心筋梗塞により急逝した。持病があったわけではなく、まったくの突然死。学校給食民営化、追手前小の統廃合、「学テ」対応、中学校改革など課題が山積する中で倒れ、帰らぬ人となった▼7月から8月にかけて猛暑の中毎晩のようにサウナ風呂のような小学校の講堂へ住民説明に出向く吉川氏を幾度も取材した。吉川氏は個性の強いワンマン教育長であったがゆえに、説明をほとんど部下にさせない。大半を自ら立ったままでマイクを握っていた。吉川氏よりも、はるかに歳下の自分でもずっしり堪える暑さの中で、いくらなんでもこれでは体調を崩しはしないかと気になっていた矢先の訃報であった▼給食民営化や追手前小統廃合は、もともと保護者の要求や市教委の都合から始まった話ではない。前者は市役所全体の定員削減のあおりで、「人減らし」がやりやすそうな部署から切捨てられているに過ぎず、後者は中心商店街対策というバイアスが色濃い。トップスピードで突っ走っていた吉川氏ではあるが、結局は市長サイドに敷かれたレールを、なりふりかまわず走らされていたように思えてならない。その心中はいかばかりであったか▼一方で、吉川氏は放課後児童クラブの予算を大きく増額させ待機児童ゼロを真剣に目指す方向へと大きく踏み出した。また県教委が打ち出そうとしている高校の学区制撤廃には、困難を抱える生徒の進路保障と周辺校の存続のためにと猛然と反対した。これらは市民の切実な願いに応えて、子供達の教育を充実させるための英断であり高く評価されるべきものだ。9月5日の葬儀には吉川氏の早すぎた突然の死を惜しむ大勢の人が訪れた。ご冥福を心よりお祈りしたい。(ひ)