「テレビより速く、新聞より深く」をウリに、産経新聞とマイクロソフトが提携したウェブニュースサイトが10月1日開設された。以前、ネットと紙の新聞の根本的矛盾、無料サイトに先にニュースを流すことによりタコが自分の足を食うように、有料の紙の新聞を掘り崩す危険について書いたが、産経は自ら積極的にウェブサイトへの転進を急ぎ、まるで「死に急いで」いるようにすら見える▼産経の新サイトの合言葉は「ウェブ・パーフェクト」。今のところ同サイトをみてもそれほど激変したようには見えないのだが、産経に言わすと、特ダネでも紙の新聞に出すのを待たずウェブで速報。記者会見全文、裁判で検察や弁護団の冒頭陳述を全文載せるなど、スペースに制限のないネットの特性を生かし、ナマの一次情報を載せるという。これだけ無料サイトに至れりつくせりでも産経は「紙とネットは媒体特性が違っているので両者は共存できる」と自信たっぷり▼片や「高知新聞」のウェブページをごらんになっている方はお分かりと思うが、同紙のサイトは記事の一部だけしか掲載せず、「全部読みたい人は紙の新聞を買ってください」という構えだ。不評も聞こえるが、産経とは逆方向の「ウェブ・インパーフェクト」とでもいう方針を高新がとる気持ちも理解できる▼産経の地方支局体制は極端に弱い。マンパワーを大都市に集中させ、夕刊廃止。三大紙と普通にケンカをしても勝てないからだろうが、次々と実験的でドラスティックな方策を打ち出すので端から見ている分にはおもしろいが、産経のこの試みは新聞社が生き残る方向を示すことができるのか、それとも破滅への道を急ぐハメルーンの笛吹なのか。(ひ)