安芸郡東洋町の高レベル放射性廃棄物最終処分場立地にむけた調査への応募をめぐる常軌を逸した騒動には驚かされる。高知県最東端の町で一体何が起きているのだろうか▼疲弊しきった過疎の町が高額な補助金に目がくらみ、藁を持つかむような気持ちで応募に傾く気持ちは理解できなくもないが、高レベル放射性廃棄物処分場は何十年もかけて調査を行い、数百年かけて放射性物質を埋設するという気の遠くなるような話で、町民や周辺の自治体のまともな議論もないまま、子孫に引き継ぐべき郷土を軽々に売り渡すようなことを町民の負託を一時的に受けているに過ぎない町長がやってならないのは当然である▼今の東洋町にとって、放射性廃棄物についてイエスかノーかということも大事だが、それ以上に重要ではないかと思えるのは、町民が自由に意見を言える環境をつくることではないだろうか。一部の応募推進派が、反対派町議を取り囲んで「名誉毀損で訴えやる」とつるし上げ、「若い衆」を引き連れて肩で風を切って町をのし歩いているという、にわかに信じられないような現実が東洋町にはあり町民は表だって意見を口にできない。だいたい町長ともに、野根漁協という何の権限もない一民間団体の組合長が、処分場誘致をいち早く応募したということ自体が異様きわまりなく、補償金をめぐる思惑が背景にうごめいていることは誰の目にも明らかである▼田嶋裕起町長は6割の町民が反対署名をしても、議会が建設拒否条例を成立させたとしてもお構いなしで応募へ突っ走るという。特定強者に従属した現在の町政は、町民自身の力で変えなければならない。町民の力で町政民主化への動きが出てくることを期待したい。(ひ) |