定価での販売を義務付ける再販制度から新聞を外そうという動きが再び強まっており、新聞協会をはじめ各新聞社は再販制度維持にむけて懸命に論陣をはっている▼論立の柱は、再販制度から外れて各社が値引き合戦になれば、消耗して現在の日本固有の優れた宅配制度が維持できなくなり、結果として国民の知る権利が奪われるというものだが、これはまっとうな議論であると思う。何でもかんでも安くなればよいというものではない▼ただ気になるのは、新聞側の言い分が実に説得力に欠けること。新聞は、自分達の身の火の粉が降りかかってくると必死になって「再販制度を守れ」と叫んでいるが、これまで「規制緩和」で攻撃にさらされてきた人たちに対して、いったいどういう報道をしてきたというのだろうか。たとえばコンビニでの販売解禁により街の酒屋や米屋が消え、郊外への無軌道な大型店やシネコン進出により商店街と映画館の灯が消えたが、「努力が足りない」と淘汰されるのを当然視してきたのが新聞だったのではないか。近いところでは郵政民営化報道。郵政職員を「既得権益にしがみつくエゴ」と叩く先頭に立ち、「構造改革」をさんざん煽って世論誘導してきたのが新聞だった。今日の状況はその因果応報である▼今、新聞にかけられている「再販制度と宅配に守られているから、おかしなことを書いても部数が減らない。競争が働かないので価格が高い」という批判は、前出の「規制緩和」にさらされた人たちへ新聞が投げつけたきた報道の内容とそっくりそのまま。本気で再販制度を守ろうというなら真剣な自己批判が必要ではないだろうか。「自分たちだけは特別」と思っているようでは、再販制度など守ることはできない。
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