県出身の直木賞作家・板東真砂子さんがまた吠えた。「高知新聞」のコラムでNHKの大河ドラマ「功名が辻」と県が購入した「高野切」をボロクソにやった▼山内家は土佐藩に君臨した絶対君主であり、その山内家のドラマや財宝を、年貢を払い続けてきた名も無き民衆の子孫がありがたがるのは「阿呆」だというのが彼女の持論。表現の不穏当さはさておき、彼女の心意気は個人的には好きなのだが、現実には世の中の文化遺産の大半は支配者側のものであり、それを全否定する毛沢東やポルポトばりの考えはやはり無理がある▼ついでに少し板東さんに注文をつける。大河ドラマ批判はまあ分かるとして、自身が登場している新聞の系列テレビ局がどんな放送を流しているのかご存じなのだろうか。タヒチではやっていないのだろうと思うが、大河ドラマとは桁違いに俗悪な番組をこれでもかといわんばかりに垂れ流している▼また板東さんは「高野切」について民衆を搾取して山内家が集めた財宝を、県民が税金を払って買い戻したことを嘆く。であれば彼女が登場する新聞の創刊100周年記念行事で、「自由民権運動の伝統を受け継ぐ」と自称する報道機関が、政権党をコントロールする巨大宗教団体の絶対君主が貧しい信者からむしり取った莫大な金で買いあさった名画の博覧会を喜んでやったことはどうお考えだろうか。高野切が「お人好しの阿呆」であれば、こちらはそれとは比較にならない醜悪さである。言論人としてメディアで他者を批判するのであれば、自身が登場する媒体のやっていることにも、多少は関心をもったほうがいい。実際のところでは、NHKと県政にケチをつけたい地元紙の意図に利用されただけのように思える。 |