風力発電が大流行である。クリーンエネルギーとして手放しで持ち上げられているが、そうとばかりは言えない問題点がある。風力発電に電力会社が消極的なことへの反発もあるのだろう。原発に批判的な勢力の推進の声が大きいが、実態をどこまで分かっているのか疑問だ▼風力発電所は風がよく吹く場所に設置される。風が吹く場所といえば山であり、稜線部がターゲットになる。津野町の鶴松森以東の標高1000メートルを超える稜線に民間会社が20基の風車を建てたのは典型的なパターンだ。稜線は最も自然林が残るデリケートなエリアであり、景観に与える影響も大きい。遠くから見ても分からないが、現場に行くと環境破壊の大きさに驚く。風車を山のてっぺんに立てるには車道をつけなければならず津野町の場合、5キロメートルにわたって稜線の樹木を伐採し、山を削って高速道路かと思うような道路をつけ超大型の重機が入っている▼「クリーン」な発電がこれでは本末転倒ではないだろうか。風力発電でよく引き合いに出されるドイツでは、環境や景観に配慮した制限がかけられているが、日本では発電所建設そのものの負荷はあまり議論になっていない。これは風力発電ブームの仕掛け人が日本風力発電協会であり、会員には石播や川崎重工や大旺建設らが名を連ね大規模発電所を売り込もうと躍起になっていることと無関係ではないだろう▼風力をやるなら規模を小さくし、地域や家庭内で電力を消費する「地産地消」をめざすべき。さらには社会全体がエネルギー消費を抑制する方向を示さずにいくら代替エネルギーと言っても話にならない。エネルギーの節約を考えるのが先だと思う。
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