児童生徒のショッキングな事件が毎日のように起き「慣れ」てしまっている日々だが、高一女子が母親に毒を盛った事件は日本中を震撼させた。事件の動機、背景にあるものなどはよく分からないが、同世代の子供を持つ親として他人事ととは思えない気がした▼少女の通う県立高校はかなりの進学校で、大人しく目立たない成績のよい生徒だったようだ。近所でも円満な家庭に見られていたという。この事件に限らず、最近の特異な少年犯罪をみると、その多くは世間的には「何不自由のない家庭」の子弟によるものである。何故なのか。一因として最近思うのは、親世代の「不自由のない生活」から子供の世代になり「負け組」に転落するという恐怖感、焦りのようなものからくる病理があるのではということ▼親の右肩上がりの時代には、努力すればそれなりに「不自由のない暮らし」ができたが、今は若者はいくら勉強しても、将来は見えないし、能力を発揮できる職業につくこともできそうにない。親の世代よりも確実に生活レベルが落ちることは容易に想像がつく。故に親は「うちの子だけは負け組にしたくない」と子供の尻を激しくたたく。出口が見えないのにプレッシャーをかけられれば強いストレスがかかるのは当然だ▼そういう自分も、子供に勉強をさせようと「負け組になっていいのか」というように脅迫的な言い方をしている時がよくある。心の中では「子供のため」などと言い訳しているが、子供は腹の底でどう受け止めているのだろう。子供らにすれば、頼みもしないのにこんな社会にしてしまった大人が恨めしいのは当然である。若者が希望を持てる政治へと早くハンドルを切らないと、この国の将来は暗い。
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