「特定塗装業者A」に異常に偏った発注をしていた高知市役所の実態は噂には聞いていたが、具体的な数字をみて正直これほどとは思わなかった。1社で(指定業者は80社以上)高知市役所の発注する塗装工事の3割を獲得していた。最もひどかった教委の職員はAへの認識を問われ「安くて早いし、気が利く」と好印象を持っていた。「圧力を感じたことは一度もない」ともくり返した▼Aにすれば、次から次へどんどん仕事を回してくれる教委に「圧力」をかける必要はない。でたらめな「相見積り」、もしくははじめからAにしか頼まないでおいて「安い」と言われても困る。価格があってないような修繕塗装で言い値で価格が決められた可能性は濃厚だ。「安い」と言うなら、まともに見積りをとってからにしてもらいたい▼Aの「営業力」には硬軟両面あり、オンブズマンや地元紙への市役所の不備のリークや、情報公開をちらつかせ行政に食い込むやり方は実に巧妙で、課に置いてくる名刺の数が他社と比して多いというのも定評があった。他の同業者は「縄張りを荒らす」と後が恐ろしく営業にいけなかったという。名刺が多いはずである▼現場では癒着が常態化し、発注の大半をAだけが占めても異常と感じないほど感覚が麻痺していた。市役所には県庁と比して税金の使途の「公正さ」への執念がいささか欠けているように思える。やはりトップの姿勢の差なのだろうか。公正な競争の結果、Aが仕事をとったのなら文句はない。本当に「安くて早い」なら公正な競争をしても仕事は取れるはずだ。誰もが納得できる公正で透明な発注方法を真剣に追求すること以外に信頼回復はできない。
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