『香峯子抄』という本がベストセラーになっているのをご存じだろうか。主婦の友社から出版されたハードカバー本で、県内の一般書店にも置いてあるので目にした人もいるだろう。香峯子さんとは池田大作・創価学会名誉会長の妻であり学会のトップレディー、「奥様」である▼本には香峯子さんの生い立ちから始まり、大作氏とのなれそめや子供の成長が記されているのだが、要するに創価版ロイヤルファミリー本である。なぜこの時期にロイヤルファミリーなのか。大作氏は今年77歳。一昨年の入院、今年3月にも重要な会議である本部幹部会を欠席するなど体調悪化が懸念されている。人間誰しも老いていくのは避けられない。『香峯子抄』と「ポスト池田」とは密接な関係がある▼大作氏への肥大化された個人崇拝と強烈な現世利益をエネルギー源に巨大化してきた創価学会には悲しいかなナンバー2といえる後継者がいない。何やら豊臣秀吉と秀頼を想起してしまうが、今のうちに大作氏の威光を最大限利用して「奥様」を持ち上げて、実権を「池田家」へと移行させ、長男博正氏へとつなげていく路線を会員に刷り込むための道具が『香峯子抄』であろう。その観点からこの本を読むと合点がいくことが多い▼巻頭の夫妻のカラー写真は「撮影池田博正」のクレジット入り。前書きも「長男博正」の署名。ふんだんに出てくる池田家の秘蔵写真では長男・博正氏の成長ぶりがこれでもかといわんばかりに繰り返され、博正氏の血筋と後継の正統性を演出するつくりになっている。カウントダウンがすでに始まっている創価学会のXデーは、日本の国家権力に重大な影響を与える。関心を持って見届けたい。
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