「嬲る」という字をご存じだろうか。読みは「なぶる」。広辞苑を引くと「@責めさいなむ。いじめる。Aからかい、ひやかす。ばかにする。B手でもてあそぶ。いじる」とある。「嬲り殺し(なぶりごろし)」となると「なぶって殺すこと。すぐに殺さずに苦しめ、もてあそんで殺すこと」とネコがネズミを捕まえた時のようなサディスティックな響きを持つ▼このような意味を持つ言葉を、メディアを通じて橋本大二郎前知事に浴びせかけた政治家がいる。その名は依光隆夫・自民党県議。昨年9月県議会で笠誠一氏、横矢忠志・和住工業社長と一体となり、議場で笠氏のメモを読み上げる「爆弾質問」で「選挙資金疑惑」を仕掛けた人物であるが、「週刊新潮」10月21日号に「せっかくの辞職勧告決議だったが、知事が辞めてしまったので計算が狂ったことは確かです。本当はもっと疑惑を追及し、じっくりナブった後で責任を取らせなければいけなかった」という依光県議のコメントが掲載されているのである▼依光議員がこの言葉を選択したことは実に絶妙で当を得ている。「嬲る」という言葉には、邪な輩がよってたかって真っ当な人間を取り囲んで痛めつけるようなニュアンスがある。県議が県政を語る時に使うような類の言葉とはとても思えないが、議会内の多数をいいことに、根拠のないまま「談合によって選挙資金が調達された」という百条委報告や、道理のない辞職勧告決議を多数決で強行し、執拗に橋本氏引きずり下ろすための攻撃をしかけてきている自民党県議団、旧社会党系の県民クラブ、地元紙のやり口はまさに「嬲る」そのもの、言い得て妙。依光県議の文学的造詣の深さには恐れ入るといわなければならない。

戻る