「三位一体の改革」に伴い全国知事会は義務教育費国庫負担金廃止を求め一般財源化することを多数決で決めた。同負担金は教育の機会均等を保障するため国が教職員の給与の半分を負担するものだ▼表向きの理由は教育の自由度を高めるということのようだが、実際には政府が勝手に決めた3兆円の補助負担金削減の単なる数字合わせであることは、中学校の分だけ削るといういびつさを見ても一目瞭然。なぜこのようなものを知事会が求めるのか理解に苦しむ▼この問題では橋本高知県知事をはじめとする「改革派」知事は精彩がない(長野は除く)。一方ゴリゴリのタカ派知事の歯切れはよかった。元文部官僚の加戸愛媛県知事は存続派の急先鋒。「単なる数字合わせで理念、哲学がない」との指摘は、教育の国家統制強化という邪な願望から出発していたとしてもやはり正しいと言わなければならない▼橋本知事は同負担金の廃止に賛意を示す一方で、防災・災害対策事業の補助負担金を「生命にかかわる」と残すよう求め「充分税財源が移譲されない場合、地滑り、治山対策事業などに影響が出かねない。国の責任逃れにつながる可能性がある」と言った。正論だ。ならば義務教育も同じように考えられないのだろうか。防災も義務教育も県民にとっては大切なものだ▼知事自身、今春には公立保育所運営費一般財源化を「80%以上が人件費で一般財源になっても地方の自由にならない」と批判していたはず。同負担金は丸ごと人件費で廃止されても県の自由度があがるとは考えられない。廃止ではなく、地域の実態に合わせて合理的に制度を改善させる提起こそが、高知県のような教育困難県の知事の仕事ではないだろうか。

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