2004年8月29日


高知医療センター ベッド納入 パラマウント社製のみ適応する仕様書で適正な競争排除の恐れ

   2005年3月開院にむけ急ピッチで工事が進む高知医療センター


 来年3月に開院する高知医療センター(県と高知市でつくる組合立、経営を民間に委託するPFI方式で実施)は総額60億円近い医療機器の購入作業に入っていますが、機器選定のプロセスを民間会社に丸投げするPFI方式(※1)の危うさがあきらかになっています。同センターが購入する約500台の医療用ベッドの購入実務を担当するSPC(※2)の協力会社グリーン・ホスピタル・サプライが、パラマウント社製にしか該当しない高額な(1台約50万円)仕様を提示していたのです。

 仕様書にはベッドの幅や長さ、木目突板模様、リモコンの液晶表示など、医療面とは無関係なところまで細かくパラマウント社製の特定機種を想定したとしか考えられない項目が記載されていました。これでは該当する機種が限られ、適正な競争が働かないことが考えられます。
 ある医療機器関係者は「この仕様書にあるものは幡多県民病院に入れたベッドよりも数段高額で1台50〜60万円はするはず。こんな豪華なものは必要ない。本当に必要な機能のものは数分の1で買える」と言います

■情報操作の危険

 7月県議会では同問題について日本共産党と緑心会の米田議員が質問。「PFIとはいえ、県民の税金でつくる病院の医療機器は、機能や購入金額が県民の納得を得る公正なものでなければならない。パラマント社はベッド納入で独禁法違反被疑事件で公取委に警告を受けたことがある。購入時のチェック、適正な競争を保障した上で機器が選定される仕組みを作るべきだ」と指摘しました。

 吉岡芳子・健康福祉部長は「病院組合はこの仕様で選定するものではない。参考資料として依頼したもの。1機種に特定されるような仕様書は認めることはない」と答弁しました。
 また県・高知市病院組合移行統括部長の長瀬順一氏は取材に答え「決めるのはあくまでも病院組合。協力企業には良い物を安くという思いがあるはずなので、一番高額でデラックスなものとしての情報収集と思う。病院組合が決める時には、必ず複数機種を競合させて主体的に決める」と強調しました。

 しかし関係者の話を聞くと隔靴掻痒、もどかしさを感じます。病院組合がいくら主体的に決めると言っても、購入の実務はSPCとその協力企業に委ねられていることから、どの機種を俎上にあげるのかという重要な情報をコントロールされてしまう可能性は否定できません。とりわけ医療機器市場は、定価が全く意味をもたない世界であり、事前の情報操作で特定の方向に誘導される危険はぬぐえません。

■ブラックボックス

 7月29日に開かれた病院組合議会協議会では、瀬戸山元一理事が、購入を急ぐ機器はすでに発注していると報告しました。病院組合に発注した機器を確認したところ、「一番急いでいるのがライナックという放射線治療のための機械。受注生産で、建物が完成する前に設置する必要があり、まだ正式に発注しているわけではないが、もうすぐ決める」と微妙な言い回し。ライナックのあとにはMRIやCTなど高額な機器購入が続くといいます。

 PFI方式に加えて県・高知市の一部事務組合となって責任の所在が不明確なことが、さらに事態を分かりにくくしている面もあり、60億円もの巨額の機器購入があたかもブラックボックスの中で決まっていくような危うさは否めませんでした。

 ※1PFI プライベート・ファイナンス・イニシアティブの略で、公共サービス提供を民間主導で行い、公共施設等の設計、建設、維持管理及び運営に、民間の資金とノウハウを活用する事業。
 ※2PFI事業を運営するために設立される企業。高知医療センターは「高知医療ピーエフアイ」(西名弘明・オリックス取締役兼専務執行役が社長、オリックス・竹中工務店・大成建設などが出資)が運営する。SPC傘下に専門的なノウハウを持つ協力会社が加わって事業を進める。