「財政再建団体」という言葉をよく聞くようになった。知事は市町村合併推進の燃焼剤としてこの言葉を使っていたようだが、市町村より先に県が再建団体になりそうな雲行きである▼財政再建団体とは赤字自治体が財政の建て直しを行う方法として自治体が選択するもので、地方財政再建促進特別措置法を準用して過去に青森県、和歌山県など296自治体が指定を受けたことがある。指定されると再建計画づくりに国のコントロールを受け、福祉や住民サービスなど独自の事業が制限されるという▼ 個人が裁判所に申請する自己破産や企業破産と同じようなものと考えていいだろう。知事は「何としても避けなければならない」と繰り返しているが、そうなった場合に、県民生活にどんな影響が出るのかはほとんど語られていない。話に出てくるのは小学1年生の30人学級やプロ野球キャンプの誘致活動ができないなど限定的なものだけである▼再建団体が避けられないというのなら、ただ危機意識をあおるだけでなく、県民生活にどのような影響が出るのかを具体的に説明し、再建団体の選択をせぬままに歳出カットを続けていく場合と何が県民にとって違うのかを分かるように示さなければならない▼この半年で、和歌山県、長野県、宮城県、青森県、大分県が財政再建団体への転落の危機を公表している。地方財政危機は高知県だけに限らず、オールジャパンの問題であることは間違いない。再建団体になるのが避けられないにせよ、「自助努力」で回避できるにせよ、知事は国の地方切り捨てに捨身で断固としてたたかう姿勢を示すべきではないか。それが「住民力」を発揮する上での公と私の信頼の前提だと思う。(2004年8月1日)

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