やたらと全国ニュースで「合併」問題が報じられるようになった。とは言っても市町村合併のことではない。プロ野球の近鉄とオリックス球団の合併話である▼国は地方交付税を削り、地方を兵糧責めで絞り上げ「合併すれば飴がある」(毒入りだが)という卑劣なやり方で合併を迫っている。住民は「路頭に迷う」と脅され、生活基盤が根底から崩れる不安の中で、「故郷の山を守りたい」という必死の思いで生きている▼それを思うと、たかがというと叱られそうだが野球チームの合併程度で大騒ぎしている都会の感覚には「のんきなものだ」と違和感を禁じ得ない。別に騒ぐなとは言わぬが、その何分の一でよい。水と緑と食料を都市に供給し続けてきた山村が存亡の危機にあり合併を強要されていることに思いを寄せてもらいたい▼球団合併に話を戻すが、もちろん合併で選手や職員のリストラ、球団地元経済への影響はあるだろう。企業の都合だけでなく、選手やファンも含めよく方向性を話し合ってもらいたいと思うが、もともとプロ野球は娯楽である。乗客の運賃や多額の公費が投入され経営されている極めて公共性の高い鉄道会社が、いつまでも野球の赤字の穴埋めをし続けることはできまい。ダラダラ補填を続けるのは背任的ですらある▼読売ジャイアンツオーナーの渡辺恒雄氏は、この機に念願の一リーグ制にしたいようだ。下心は見え透いているが、トップ選手がメジャーに抜けファンが激減しているプロ野球界は再構築を真剣にしなければならない時期であることは間違いない。もう殿様商売は通用しない。その議論の中に1リーグ制という選択肢があっても構わないのではないだろうか。(2004年7月4日)
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