イラクで大量破壊兵器を捜していたCIAの特別顧問デビッド・ケイ氏がアメリカがイラク戦争の最大の理由にあげた大量破壊兵器は存在しなかったと発言した。イラク戦争の大義、米軍による占領支配の「正当性」は根本から崩れ、フセイン大統領拘束後も激しさを増す占領軍への攻撃と合わせて、イラク戦争の矛盾が明らかになった。「大量破壊兵器はいずれ見つかる」と強弁し、資金提供や自衛隊の派兵で米軍の占領支配に荷担してきた小泉首相の責任も重大で、見過ごすことはできない▼イラク南部のサマワに派遣された陸上自衛隊先遣隊が一部帰国し、イラクでの「歓迎」ぶりを報告した。サマワからの報道を合わせて考えると、イラク国民の中にある「自衛隊が来れば、雇用が生まれる」という思いが理由のようだ。しかし実際には自衛隊の活動で安定的な雇用が生まれるわけではないだろうし、逆に自衛隊を送らなくても日本として雇用対策をすることはできる。自衛隊員の命を危険にさらし、ばく大な派遣費用をかけるくらいなら、軍事的以外の方法で長期的な支援をしたほうが、イラク国民の期待に応えることになるのではないだろうか▼「自衛隊」=「雇用」という図式は、「日本は平和憲法を持つ国だから、平和的貢献をしてくれるはず」というイラク国民の期待の表れだとも思う。しかし現実には先遣隊派兵が、CDショップでの爆破事件、イラク人警察官の殺害など、サマワの治安状況を悪化させている可能性もあり、このまま派兵を続ければ、イラク国民の期待を完全に裏切ることになる。それは日本とイラクの両国民にとって不幸な結果ではないだろうか。(2004年2月1日)
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