全国的に話題になった今年のニュースで印象に残っているのが、ハンセン病元患者が大分県の「アイレディース宮殿黒川温泉ホテル」に宿泊を拒否されたという問題である。当然のことであるがこのホテルの非常識な対応に批判が集中。ホテル側は謝罪に追い込まれた(いろいろとおかしな言い訳もしているようだが)。ちなみにホテルのオーナーの西山栄一氏は元創価学会員といわれ、アイスターという化粧品でマルチ商法まがいの被害を出し、「女性党」を結成して政界進出をめざすなど相当怪しげなことをやってきた人物である▼この問題はメディアの注目をあびたが、実は少し気になる点がある。一つはこのホテルをスケープ・ゴートにしておけば事足れりという安易な流れ、もう一つはこのホテルがとんでもないということが「発展」させられ、国民の中のハンセン病への差別と偏見の根深さをことさら強調する傾向である。後者も善意のつもりなのだろうとは思うが、国家権力による差別的な隔離政策と、国民間の問題や個々人の内心の領域を混同して、国民を「差別者」扱いする見当外れな議論だといわなければならない▼もちろん国民に知識不足や未経験からくる戸惑いはあるだろうが、それは「差別・偏見」とはまったく次元のことなるもので、交流と相互理解をすすめていくことにより解決は充分可能ではないのだろうか。ホテルの対応は社会的に全く受け入れられなかった。元患者と入浴しようと大学生が発言したり、高知市で開いた元患者を招いた学習交流会も盛況で大勢の若者が詰めかけた。ここに国民の健全さが示されているし、展望がある。「差別と偏見」の根深さをただただ嘆くだけでは何も生まれない。(2003年12月21日)
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